有村果南の場合 ④

実は、私の羽根の色は、薄汚れたねずみ色をしている。


有名な童話で、みにくいアヒルの子と言う話を知っているだろうか?


他のアヒルの子と違って、一人だけ汚いねずみ色の羽根をしたアヒルの子が、実は白鳥の子だった!と言う話ですが、私も小さい頃まではこの話を信じて疑わなかった時期があった。


お母さんが、果南もいつか、お母さんやお父さんやお兄ちゃん(2歳年上の兄が居る)と同じ位白い羽根になれるわよ!

と言い続けてくれたので、それをずっと信じていた時期があった。


けれど、それは間違いで、私は有村家の唯一のねずみ色の羽根の突然変異体だと言う事を中学生の時に知った。


以降、何だかちょっと家族との距離が遠くなった様な気がして~でも、この羽根を受け入れなければならないと言う葛藤で心が病みそうになっていた時に、この部活が活動している所を見たのだ。


この、退化した人類の羽根でも空を飛べる!(かもしれない)部が創設されたばかりで、部員も10人以上いて生き生きと活動している様を見た私は、この部活で頑張って空を飛べる様になったら、ねずみ色の羽根を今度は本当に受け入れられそうな、そんな気がしたのだ。


~と言う理由で、私はこの学校、海鹿島高校あしかじまこうこうを受けた。


山と川と田んぼしか無い地域なのに、海鹿島あしかじまなんて~何かちょっと変だな?と思うかも知れないけれど、でも昔からこの辺りの地域では、海も無いのにお船引き祭りとか、そんな感じのお祭りがあったりするので、そう考えると海鹿島も別段不思議な事は無い?のかも知れない~と、納得してしまったのである。



朝日射す山頂から滑空して、下の方にある着地点に到達する~と言うのが、早朝練習の目的だ。


が、そんな高等テクニックが出来るのはユッキー先生とリンちゃん先輩の二人だけなので、私達1年生組(私・サエちゃん・弓木)は見学しているだけ~なんですが・・・。


「見ながら、羽ばたきの練習は怠るなよ!」


と、言うので、しきりに羽根をバタバタさせて羽ばたく練習を必死でやるのであった。


「参考資料は、そこいらを飛んでる鳥だ!よく見て羽ばたく様に!」


と言う言葉通りに、すぐ近くを飛ぶ鳥の羽根の動きに注意しながら羽根を動かしまくると言う~、いつもと同じ光景が今日も繰り返されるのだった。





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