第39話-敵対

若宮家を襲撃したヒデヨシが自らの失敗を嘆きながら外に出ると、どこかで見た顔がこちらを見ていた。


…久屋 錦。

白の大衆車に乗った男は、すぐ近くの路上からじっと若宮家の方を見ていた。

久屋が今回の襲撃に備え、何かの邪魔立てをした事は、ヒデヨシには容易に想像がついた。

やはり最初の訪問の時に、殺しておくべきだった。

そんな事を考えながら、ヒデヨシは足音を殺して車に近付く。


武装が日本刀であるという事を知ってか、久屋は車から出る事はない。

しかしヒデヨシを視認できているわけでもなさそうだ。




車に火を放ち、出てきた所を斬る。

そう企てていた矢先に、ヒデヨシの身体に衝撃が走る。


どこからか、右脚を撃ち抜かれたのだ。

見えないはずの自分を、見えないような場所から。


ヒデヨシは過去の、施設の襲撃を思い出していた。

理屈すらわからない敵に、ただただ感服する。


そんな事を考えていると、久屋の乗る車がヒデヨシめがけて急発進をした。

滴る血を目掛け、明白な殺意を持って。






…まんまとハメられた。

こちらの手札はオープンにされ、久屋と少年の力は未知数。

間一髪の所で車を避けたヒデヨシは、この場を一旦引き、そして…


最後の手段に手を伸ばした。

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