第4話 ギャングスタ

 三人は武器庫に上がった。他の人間の足音と話し声が聞こえていた。

 マックスはM57拳銃のスライドを軽く引き、金色のプラスチック薬莢を使用した5.7ミリ弾を確認した。そして、スライドの後部を掌で叩いた。チェック・アンド・プレス。

 マックスは壁に張り付き、二人を制した。

「隠れてろ」

 ケンはソードオフ散弾銃に、二発のタングステン・フレシェット散弾を装填した。

 マックスが、壁から瞬時に頭を出して引っ込めるクイック・ピークで覗くと、5人のボディアーマーを着た男達がエネルギー銃を持っていたのが見えた。

「ここのどこに、あのクソ共がいるんだ?」

「探して殺せ」

 スペイン語で、男達が言った。

 風貌はちんぴらだった。しかし、軍人のような銃の扱い方だった。

「あいつらは知り合いか?」、マックスは聞いた。

「たぶん、ギャングだろ。あいつらは知らんよ」、ケンが言った。

 上体を傾斜させて、壁から顔と銃だけを出して、リーンという姿勢でマックスは銃を撃った。

 二人の男の頭に二発ずつだ。甲高い発砲音が4回響き、5.7ミリ弾の高初速弾頭が、男達の体内で横転して、脳をえぐり続けた。二人の男が倒れた。

 男達は瞬時に反応し、エネルギー銃を腰だめに構えたまま、エネルギー弾を乱射した。マックスは体を引っ込めた。沢山の赤いプラズマの光球が壁を焼いた。男達も、壁に隠れた。練度が高い。彼等は中南米連邦の陸軍特殊部隊上がりだった。一人は、大陸軍上がりの韓国人だった。中南米は金がなくなっていた国家だったので、元特殊部隊員ですら一介のギャングの手下に成り下がっていた。韓国人は大陸軍の、近代化による波でリストラを食っていた。どこも余裕がなくなっていた。儲かったのは犯罪者と大企業だけだった。

 プラズマガンは、短射程だったが、無反動かつ足がつきにくい銃として、犯罪者達に人気だった。

「あのクソ共がいたぞ!」、男達は叫んだ。

 マックスは中腰になって、ケンがその後ろに伏せてついた。マックスはリーンして、隠れていた男の銃を撃ち抜いた。プラズマガンのガス加熱装置がだめになって、その男は拳銃型コイルガンを抜いた。ケンは転がって壁から体を出し、フレシェット弾を放った。フレシェット弾が、男の腕の動脈を撃ち抜いた。血が男の腕から流れ続けた。男は傷口に注射を打った。痛み止めと、血を吸うと膨らんで血を止める、止血用スポンジが含まれている注射だ。

 男達がプラズマを壁に撃ち込んだ。壁が溶けて、クレーターのようになった。

 二人は壁に体を隠した。

「ケン、隠れてろよ」

「俺だって昔は軍人だったんだぞ」

「昔は、の話だろ」

 マックスは後ろに下がって、壁で角度を取ろうとした。カッティングパイといわれる技術で、必ず一人だけと交戦するようにした技術だ。

 一人がマックスから丸見えになった。

 男が壁から体を全て晒して、コイルガンを撃とうとした。マックスは男の胸に二発を撃ち込み、頭を最後に撃った。モザンビーク射撃法だ。

 コイルガンがフルオートで連射され、マックスの横から天井までに8ミリプロジェクタイルが穴を開けた。

 残り二人。

 マックスは転がって、逆サイドの開口部についた。プラズマが壁を溶かした。

 マックスは拳銃を左手に持ち替えた。パームトゥパーム。

 プラズマが連射された。男が、ほんの少し前の壁まで走っていった。その男がまたプラズマを連射し、さっきまで撃っていた男が前の壁まで前進した。素晴らしいチームワークだった。マックスは拳銃の握り方を変え、右手の人差し指を銃の引き金に掛けた。

 次にプラズマの連射が来た。

 マックスはリーンで体を出し、拳銃を前へ押しつけた。セミオートの拳銃とは思えない高速連射が行われ、前進する予定の男はサブマシンガンの連射と勘違いして立ち止まった。バンプファイアと呼ばれている技術だ。

 そこに、ケンがフレシェットを撃ち込んだ。散弾の一部はボディアーマーに防がれたが、ボディアーマーに当たらなかった散弾が、男の眼球から脳内に侵入し、男は息絶えた。ケンは散弾銃が弾切れになったのを確認して、銃を二つに折った。

 最後の一人になった。マックスは拳銃をらせんのように回転させて、マガジンを吹き飛ばした。そしてマガジンを挿入した。

 マックスが立って、リーンしようとすると、男が目の前にいた。

 ナイフを持って、月の重力の軽さを生かして、壁を蹴って飛んできたのだ。大陸軍にいたときは、格闘技能で勲章をもらっていた韓国人だ。

 マックスの喉に向かって、ナイフの切っ先が飛んで来た。

 マックスは拳銃を持った左手で、ナイフを払って、右手で服を掴み、壁に叩き付けた。

 壁に押しつけられた男は悲鳴を漏らした。マックスが頭突きを打ち込んだ。相手の鼻は折れ、血が出た。男が左の掌をマックスの顎に打ち込み、マックスはふらついた。

 男が拳を振り下ろし、マックスの左手を打った。拳銃がたたき落とされる。

 男が回転し、後ろ回し蹴りをマックスの側頭部に食らわせた。

 マックスが吹っ飛んで、壁にぶつかった。

 マックスは首を鳴らし、構えた。

 男が笑った。

「抜けよ、ナイフを」

「お前がナイフを捨てろよ、素手でやり合おうぜ」、マックスは言った。

 韓国人は笑って、ナイフを腰に納めた。

 マックスはボクシングのように構えた。男は体を半身にして、腰で手を構えていた。マックスはタックルを男に仕掛けた。男はそのまま食らって、壁まで押しつけられた。

 マックスは男の頭を両手で壁に叩き付けた。そして、ボディに膝を何発か入れて、男の顎を肘で打ち抜こうとした。男は肘で肘を受け止めた。マックスの頭突きと男の頭突きがかち合った。マックスがボディブローを食らわせて、男はうめいた。男がマックスの足の甲を踏み付けた。マックスが男の頭を左手で持って、壁に打ち付けた。男は両手でマックスの胸を押し飛ばした。男がマックスの喉を狙って、つま先での前蹴りを食らわせようとした。これを食らったら、一撃で喉仏が砕ける。避けきれずに、顎を打ち抜かれても酷いことになる。この韓国人は喉への蹴り一撃で、何度も敵の兵士を殺していた。マックスはしゃがんで避けた。男がそのままかかとを脳天に落とそうとした。マックスは前に出て、両手で足を受け止めた。足を払って倒し、股間に拳を打ち込んだ。男は股間が潰れ、意識を失った。

 マックスは拳銃を拾った。

「ルビーは、地下室に隠れてるべきだ。ケンもな」、マックスは息を切らして言った。

「俺は行く。奴等の勝手にさせるもんか」

 両耳をずっと塞いでいたルビーは頷いて、地下室へ駆け下りていった。

 ケンは散弾銃にシェルを装填して、戻した。マックスはM300ライフルを手に取り、ボディアーマーを着込んで、マガジンをマグポーチに差し込んだ。

 二人は、階段へ向かって歩き始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る