取り戻せアンケート! 6

「うーんと、ざっくり計算したところ、やっぱり私が一位、アプロディテ様が二位ですね」


「うう……」


「――あ、いえ、ヘラ様が一番ですよ!」


「本当!?」


「下からですけど!」


 死体蹴りだった。

 しかしヘラは敗北を認めたくないのか、何やらブツブツと呟いている。


「ど、どうにかして結果をすり替えないと……そ、そうだ、物的証拠さえなければ、誰も私の順位を決め付けることは出来ない筈!」


「――だ、そうですよ旦那様」


「なるほど、女性ならではの残酷さってやつだね」


 ともあれ、本気だとしたらいただけない。

 でもどうやって止めるのか。戦力になりそうなゼウスはフラフラだし、ハーデスとペルセポネもヘラほどの腕っ節はない。抵抗されたらお終いだ。

 そんなとき。


「うふふ、ヘラちゃんの負けよー!」


 行方を暗ましていたアプロディテが、一行の前に現れた。

 ヘラは悔しさのあまりに地団駄を踏んでいる。ゼウスが慰めようと近づくが、結果は書くまでもなかった。


 反面、ペルセポネは勝ち誇った笑みを浮かべていた。アプロディテの方も彼女とは視線を合わせない。

 とりあえず一勝、美の女神はもぎ取りたいようだ。


「さあヘラちゃん、負けたんだから私に何かして頂戴ねー? そうね、ヘパイストス様との離縁とか」


「認めるわけないでしょ!? アタシが負けたんて!」


「あ、そっちなんですか。息子さんのことはどうでもいいと」


 ペルセポネの突っ込みも、二柱には届かず。

 負け犬同士の戦いが熱を帯びていく。


「――こうなったら物理ね。アンタが負けを認めるまで、殴るのをやめないっ!」


「乱暴ですー! ゼウス様、奥さんを嗜めてくださいよー!」


「うむ、仕方あるまい。……ヘラ、ワシの方からも頼む。この通りじゃ。もしここでお主が引いてくれれば、お主の魅力をワシは再確認するじゃろう」


「っ……な、何よ、浮気者のくせに、信じてほしいっていうの?」


 内心では期待しているのか、少しヘラの視線が和らいだ。

 本来なら微笑ましい光景なのだろうけど、冥界一行の感想は別で。


「ヘラ様、チョロいですねえ」


「そうッスねえ」


 同意の声しか、聞こえないのだった。

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