短い話

雅島貢@107kg

親切な宇宙人の話

「いやはや、なかなか変わった星だったな」

「まったくだ。有機生命体とは……しかしまあ、これで卒業は確実だろう。いやあ、疲れた。早く帰ってモイルを傾けたいよ」

「うむ。あ、しまった、例の処理を忘れていた」

「例の処理? なんだっけ?」

「ほら、調査のお礼として、一つ願いをかなえるってやつ」

「ああ……いいんじゃあないのか? そんなの。やつら、俺たちが『調査』をしたってことすら気づいていないと思うけど」

「そうは言ってもなあ。決まりは決まりだ。すぐ終わるし、やろう」

「うーん、まあ分かったよ。まずは『願い』をどれにするか決めなくちゃあな」

「そうだな。コンピュータ! うん、分析を頼む。お、出てきたぞ」

「『働かないで金が欲しい』か。うーん、そりゃああんな紙、いくらでも複製できるが……。たぶん、そういうこっちゃあないんだろうな」

「なんとなく、デリケートな問題が起る気がするな。こっちはどうだ?」

「『若くて健康で、長生きがしたい』か。うん。これなら。彼らの体組成は完全に解析完了しているし……ええっと、これをこうして、と。これを打ち込めば、彼らの肉体は老化を止め、現状を保つはずだ。で、どうする?」

「そうだなあ。全員に打ち込んでいく時間はないし、まあ一人でもかなえてやればいいだろう。手近なところで、なるべく若くて健康なやつに、それを打ち込んでやればいいんじゃあないか?」

「じゃあ、そうしよう。この個体でいいか?」

「いいんじゃあないか? 元気そうだし」



 ほぎゃあ、ほぎゃあ、ほぎゃあ……

「あらあら坊や、どうしたの、急に泣き出して。あら、首に……蚊でもいるのかしら。いやねえ。ほら、よおしよし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る