犯罪シンドローム

蒼井和希/あおい和希

プロローグ



 気がついた時は知らない家の天井だった。

 どういうことだろう。

 自分の足でここに来た訳では無いことは明白だった。

 自分の身に起こったことを回想してみた──


 この日は雲一つ無い、晴天だった。

 せっかくだから散歩をしようと外に出かけた。

「ねぇ、知ってる?最近、騒がれてる物騒な事件!」

「知ってる!怖いよね!事件の統一性がないんでしょ?」

 散歩の途中で、今話題の事件について、女子高生たちが話しているのを聞いた。

 そう、この町には恐怖を貶めている殺人事件が多発している。事件に統一性がなく、何に対しても気を張らなくてはならない。

 誘拐、刺殺、放火、轢き殺し…彼のすることはさまざまだ。

「彼」と説明したが犯人の性別が男であるうえに名前が桐生卓人であることが判明していた。

 どこから洩れた情報なのかは分かっていない。

「早く帰ろ…」

 考えてるうちに怖くなり寒気がした。

 早足に家への道を歩く。

 耳から流れる音楽プレイヤーの曲は場違いなような気がしてくる。

 人通りが少なく、民家が多く立ち並ぶ道を一人で歩いていた。今思えば、これがいけなかったんだろう。

 気がつけば、天と地が逆になっていた。

 …え?

 何、これ…。

 逆さの視界 の端で青い車と青年が見えたのを最後に意識が途絶えた──


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る