第15話 泉

 大きな森の中の小さくて綺麗な泉を見つけたノスリさんは、ゆっくり下りて行きました。あしの中のイトヨくんは大丈夫でしょうか。


 ノスリさんは泉の側に下りると、イトヨくんをその中に放してあげました。イトヨくんは弱っていて、もう自分では泳げないようでした。身体を半分斜めにしたままぼんやりと浮かんでいます。


 それでもイトヨくんの声はノスリさんにちゃんと届いて来ました。


「ノスリ、ありがとう。最後にこんな綺麗な水に入る事ができて、僕はとっても幸せだよ。もっとノスリと一緒に居たかったな……」

「私もですよ、イトヨくん。お友達になってくれてありがとう」

「さよなら、ノスリ」


 イトヨくんはもうそれ以上、何も言いませんでした。イトヨくんの小さな、それでいて銀色に光る美しい体は、静かに泉に浮きました。


 ノスリさんはずっとずっとそこに立っていました。

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