続、林檎

姫様

姫様のお好きな林檎を持って参りましたよ

赤くて赤くて甘そうですよ

どうかご機嫌をお直しください


娘の部屋に入った老婆は

仏頂面のお姫様に

真っ赤な林檎を一つ差し出す

娘は何も疑わず

林檎を両手で受け取った


その時老婆の背後から

大きな男の手がのびて

娘の手から

林檎を奪った


くしゃり


男が


林檎をかじる


麗しのお姫様がまるかじりは駄目ですよ

ねぇ

女王のお手伝いさん

貴女もそう思うでしょう?


ぐしゃっ


王子は林檎を床に落とし

腰の剣へと右手をのばす


老婆が小さく悲鳴をあげて

慌てて家から出ていくと

王子の体がぐらりと傾いだ



じわり


毒は


まわる

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