第32話 留年大学生の戦略・その2

続いて考えたのは、自分のアピールポイントを何にするか?ということだった。

いわゆる、「ガクチカ」というヤツだ。


大学に7年も通っている人間なのだから、お世辞にも「学業に力を入れてきました!」なんて口が裂けても言えない。

いや、本当は6年目以降は力入れてたんだけど、結局は8年分トータルで見られてしまうので、それはアピールにならないと考えた。

加えて、6年目以降の勉強の力の入れ方は、どちらかと言えば単位を取得するための勉強であって、知識を得るためという学業本来の目的からはズレているのではないか?と薄々感じていた。

大学生をやっていると、つい単位が取れた取れないの話に終始しがちだが、そもそもの勉強の目的とは、単位を取ることでもなくテストで点数を取ることでもなく、知識を身に付けることにあるはずだ。

であれば、わたしはそれをアピールすることはできない。

そう考えた。


だったら、アピールすべきは大学以外の部分だ。


他に学生時代で力を入れたこと...考えて思い浮かんだのは2つ、アルバイトとボランティアだ。

どちらもそれなりの成果と貢献ができたんじゃないかな、と考えたからだ。

この要素をどう組み合わせたり、再構成すればアピールポイントにできるだろうか...。

アピールの要素として考えるべきは、それぞれ自分がどういう経験をし、どう感じ、どういうアクションをとったか、だ。


まずはアルバイト。

自分は人とのコミュニケーションと笑顔が苦手だったのは、これまで書いた通り。

それを弱点と認識しつつも、どう話せば相手に伝わるか?気分を盛り上げてもらえるか?よりチーム連携が取れるか?

笑顔も意識して口角をあげるように努力もした。

結果、コミュ障は改善し自分に自信が持てるようになったのだ。

前のアルバイトでは、努力の結果、「向いてない」と言われた人から「辞めるのもったいない人」へと変わることができた。


続いて、ボランティア。

ITが分からないと言っている方に対し、どう伝えれば理解してもらえるか?どういう切り口で話せば疑問が解決できるか?どんな言葉を使えばイメージを共有できるか?

チームでの反省会でも、自分は客観的にチームの活動を見るよう意識していたし、反省会でも一番発言していた。

自分はメインメンバーではなくサポーターだったが、それでも当事者意識は忘れず、積極的な行動と発言をする努力は怠らなかった。


さて、この2つのエピソードを見比べてみよう。

すると...どちらもコミュニケーションについて考え、努力していたことに気づいた。

そうか、これをアピールポイントにすればいいんじゃないか?


この頃、授業でグループワークのようなものをすることが多くなっていた。

思い返してみれば、自分がそんなグループの中でも積極的に発言していたように思う。

まぁ大学の校風なのか、集まる生徒がそういう傾向になってたのか。

あるいは、情報系という学問を志向する人々の趣向なのか...どうもわたしの大学にいた生徒は大人しく、自分から発言をしていく生徒は少なかったのだ。

そんな中、チームで活動することを覚えたわたしは、グループワークで発言がないことと、そのせいで活動が先に進まないことにじれったさを感じるようになっていた。

だから、意図せずコミュニケーションについて考え続け、努力してきたことが授業でも活き、確実に成果を上げるようになっていた。


気付いた時はさすがに笑ってしまった。

なんだよ、アピールポイントがコミュニケーションに関係することって!

それはつまり、自分にはコミュニケーション能力があります、ってことかよ!

ずっとコミュ障だったわたしが?


数年前のわたしだったら、そんなバカなと確実に思ったことだろう。

だが事実、わたしのアピールすべき材料はコミュニケーション能力と、それをどう身に付け、どう活かしたか、というエピソードだった。


これで、わたしのアピールポイントは決まった。

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