4話 パーティーに誘うには 3

 さて、改めてお嬢様を仲間にすることを決意したわけですが、朝食を食べ終わって、私ときゅーちゃんは最初にお嬢様を尾行するではなく、どうやったら仲間に入ってもらえるかを考える事にしました。 

 そこでまず最初に、アドバイスを貰う為いつもの受付のお姉さんに聞くことに。

 私はお姉さんにお嬢様の特徴、最近の動向(クエストなど)を伝えます。 すると特に考える様子を見せることなく、すぐに答えてくれました。


「それってもしかして、『リタ』さんのとこでしょうか?」

「ほうほう。 リタっていうんですか、あのお嬢様は」

「ほうほうって、一日中尾け回しておいて名前もわかってなかったの?」


 きゅーちゃんは呆れた様子でそう言ってきます。


「だ、だって、昨日受付した人は別の人だったから聞きづらかったんだもん!」

「クエスト受けてないのに報酬貰ってるくせして聞き辛いも何もないも思うんだけど」

「ぐ……!」


 ホント妙なところで正論付いてくるよねこの子は。


「もうきゅーちゃんはちょっと黙ってて! で、そのリタって子なんですけど、この前パーティに入って欲しいって誘ったら断られちゃって……でも、どうしても諦められなくて……どうしたら仲間に入ってもらえますかね?」

「うーん……」


 私がそう相談すると、姉さんは頰に手を当てて考えるように唸り始めます。 それは、仲間に入ってくれる方法を考えてくれるというよりは、どこか困ったような、言い辛い事をなんて言おうか言うまいかを悩んでいるように見えました。

 あれ、これデジャヴなんじゃ。

 お姉さんは数秒間考えた後、


「あの……ちょっと申し上げにくいんですけど、リタさんは……その、ちょっと問題のある方なのでやめたほうが……」


 ウェイトレスさんに続いてまたやめた方が良いと言われてしまいました。 どんだけ問題児なんですかあのお嬢様。


「他でもそう聞きましたけど、その辺は大丈夫ですよ。 前例がありますし、今回もなんとかします!」

「へえ、それは頼もしいね! ところでその前例が誰のことを言っているのか詳しく聞かせてもらおうか」

「そんなわけで! 出来たら仲間にするためにはどうしたらいいか、アドバイスお願いします!」


 自信持って答えたところを掴みかかろうとしてきたきゅーちゃんの頭を掴んで抑えつけ、私はお姉さんに教えを請います。

 その光景を見てお姉さんは苦笑しつつ、


「まぁギルドとしても、リタさんにはそろそろどこかのパーティに入って落ち着いて欲しいと思っていたので、ヒビタさんのお気持ちはとても嬉しいです。 こちらで出来ることがありましたら、協力します!」

「ホントですか! ありがとうございます!」


 快く受け入れてくれたお姉さんに、私は深々と頭を下げます。

 お姉さんは、「いえいえ」と返してから、


「ではまず、条件を絞って募集をかければどうでしょう?」


 早くもアドバイスをくれました。


「募集……ですか?」

「はい。 リタさん自身も、何処かのパーティには入りたいと思っていて、募集の張り紙は良く見ているんですよ」

「なるほど……でも一応、私が書いた募集の用紙はまだ貼ってあるんですけど?」

「『初心者大歓迎』っていう内容のものですか? それでも悪くはないんですが、それだと、『自分じゃなくてもいい』って考えが浮かぶと思うんです」

「自分じゃなくてもいい?」

「はい。ここは駆け出し冒険者の町ですから、他の初心者だって沢山います。だから、ヒビタさん以外にも初心者を歓迎する内容の募集は多いんです」


 確かに……そういう募集内容の貼り紙は、私が貼った募集の物以外にも散見しました。

 同じ内容の物があれだけあるということは、応募する側として、お姉さんの言った『自分じゃなくてもいい』だけでなく、『ここじゃなくていい』って考えも働くのでしょう。

 となると方法は……


「なので、『この条件に当てはまるのは自分しかいない』『このパーティーには自分が必要だ』って思わせる内容の物にすると、より良いと思いますよ。 例えば、『回復魔法が使える人募集!』とかですね。 ご存知かとは思いますが、リタさんは回復役が行える僧侶系の職業ですし、これだけでも一気に絞れますよ」


 丁寧に具体例まで出して教えてくれるお姉さんのアドバイスを、私は「ほうほう」と相槌をうちながらメモします。

 なるほど、『自分しかいない』と思わせる事ですか。 確かに、自分程条件に当てはまる人間もいないだろうと思わせれば、パーティーに参加してくれる確立はグンと上がりますよね! 一度断られていたとしても、『自分を心から必要としている』と思わせられれば、そう簡単には無碍に出来ないはずです!

 私はパタンとメモを閉じ、


「わっかりました、ありがとうございます! 早速やってみます!」

「お力になれて良かったです。頑張ってください! 吉報をお待ちしてますね!」

「はい! さ、きゅーちゃん行くよ!」

「ん。 了解」


 アドバイスを貰ってお姉さんにお礼を言った私は、いつの間にか壁に背を預けてカッコつけながら休んでいたきゅーちゃんに声をかけ、早速次の行動に移ることにします。

 仲間にしたい人間の条件を絞る。 そうするにはまず、


「情報収集。 尾行の時よりもうまく行くといいね」


 人のセリフを奪うだけでなく皮肉を飛ばしてきたお子様にげんこつを食らわせる事ですね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る