重奏的なホロスコープの仕組み

 西洋占星術を読み解く上で最も不可欠なホロスコープ。いわゆるその人が生まれた瞬間の天空の星の配置(出生図とかネイタルチャートとも言います)の中では、主に星座(サイン)、惑星、ハウス、この3つが重要な要となっています。この10の惑星が散らばり、12の星座(サイン)と同じく12のハウスが反時計回りに配置された円球状のホロスコープの各々の位置関係を見ながら様々なことを占っていく。


 上の12サインは牡羊座から始まって、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、そして最後に魚座と、太陽の通り道である黄道12星座が扱われています。10の惑星は、太陽と月を加え地球を除いた、太陽系の10惑星(太陽と月は厳密には惑星ではありませんが、便宜上)。


 それぞれ太陽は獅子座の、月は蟹座の、水星は双子座と乙女座の、金星は牡牛座と天秤座の、火星は牡羊座の、木星は射手座の、土星は山羊座の、天王星は水瓶座の、そして海王星は魚座、冥王星は蠍座と、その星座を司る支配星(ルーラー)が決まっています。


 12の星座は頭のてっぺんから爪先まで人体にも対応しており、さらに10惑星も女性や男性、若者や老人など、それぞれの星の性格に相対する人物がイメージされていたりもします。星座そのものの由来である物語もですが、惑星もマーキュリー(水星)マーズ(火星)ヴィーナス(金星)などというように、ギリシャ神話における神々の名で呼ばれていたりも。


 そして12のハウス(室)は1~12それぞれに人の一生になぞらえた意味合いが各々あり、その12ハウスは上記の12星座(サイン)にも1室は牡羊座、2室は牡牛座……と、反時計回りに対応しています。


 第1室は「自分自身」のハウス。第2室は「所有、金銭」のハウス、第3室は「兄弟姉妹、初等教育、小旅行」のハウス。第4室は「家庭、故郷」のハウス。第5室は「恋愛、娯楽、子供」のハウス。第6室は「雇用、健康」のハウス。第7室は「パートナー、結婚、対人関係」のハウス。第8室は「性、遺産」のハウス。第9室は「哲学、海外、遠くへの旅、高等教育」のハウス。第10室は「社会性、天職、キャリア」のハウス。第11室は「理想、願望、仲間」のハウス。そして第12室は「秘密、過去、隠された敵」のハウス。


 ……といったように(笑)文字通り人が生まれた瞬間の、ゆりかごから死に至る墓場まで。むしろ一番最後の12室は「生まれる前」の胎内の意味合いも含んでおり、そこからまた新たに最初の1室へと続いていく、このもう一巡していくような連続性は、まさしく何度も同じ季節を繰り返しているホロスコープそのものの様相を呈しており、人の生き死にもまさにそうなのだと思うと、非常に感慨深いものがあります。


 そこから様々に各々のハウスそのものの意味を自由な発想で様々なものに置き換えて解釈の幅を広げていくこともできます。その点では占星術やホロスコープは、それを読む人によって様々な解釈の幅があり、とても自由です。さらに10の惑星にも、それぞれ意味合いがあり、太陽は生命力や主体性、月はプライベートや感性、水星は言葉や知性、交通コミュニケーション、金星は愛と美と金銭、火星は生存競争や性や意欲を。月から火星までの内惑星は主に個人的なことを占うのに特化していますが、そこから先の外惑星は個人というよりは社会的な動きやその影響力。


 木星は宗教、哲学、そして幸運の星。土星は忍耐、堅実、試練を意味し、天王星は革命、テクノロジー、未知。海王星は夢、理想、嘘。冥王星は極限、生と死、カリスマなど。特に天王星以遠の外惑星は「トランスサタニアン」とも言われ、現世的なものを超えた文字通りの宇宙へとつながる意識を示していたりもします。実際、公転軌道自体が非常に遠大となる上記トランスサタニアンは、同じ世代間での共通意識なども示しており、大きく括った時代的な世相なども司ります。


 なお12ハウスには、対向するハウスそれぞれに「対極性ポラリティ」という概念があり、1室は7室、2室は8室、3室は9室、4室は10室、5室は11室、そして6室は12室と、それぞれ対になっている対向ハウス同士似通った、あるいは正反対の意味を持ちます。

 

 すなわち「自分自身」(1室)×「相対する社会的パートナー」(7室)

「自分自身のポケットマネー」(2室)×「他者からの遺産」(8室)

「初等教育、近隣への旅行」(3室)×「高等教育、遠方への旅」(9室)

「故郷、身内」(4室)×「社会的な評価、頂点」(10室)……と、いったように。


 1~5までは割と個人的な事に近い内容なのに、6~12に至ると、もっと社会性を含んだ「広い世界」へと扱われている事柄が次第に変化していくことが分かると思います。これは12の星座や10の惑星(内惑星から外惑星へと)にも共通している部分です。


 因みに星座自体も、牡羊座×天秤座、牡牛座×蠍座、双子座×射手座……と、それぞれ180度で向かい合った対向星座同士が全く正反対の、そしてやはりある部分では似通った性質を持ちます。これは星座(サイン)自体が3つの要素(3区分)と4つのエレメント(元素)とに分かれることにも起因しています。


 火のエレメント―牡羊座、獅子座、射手座

 地のエレメント―牡牛座、乙女座、山羊座、

 風のエレメント―双子座、天秤座、水瓶座

 水のエレメント―蟹座、蠍座、魚座 


……これらが4つのエレメント。そして3区分の要素は、


 活動宮〈アンギュラー・サイン〉―牡羊座、蟹座、天秤座、山羊座

 固着(不動)宮〈フィクスト・サイン〉―牡牛座、獅子座、蠍座、水瓶座

 柔軟宮〈ミュータブル・サイン〉―双子座、乙女座、射手座、魚座

 

 12星座(サイン)それ自体も、それぞれこういったグループ分けをすることができます。つまりエレメントや要素で分けると、それぞれがそれぞれと共通する部分も持っているということなのですね。星座はもう一つ女性星座と男性星座という性質の分け方もあります。牡羊、双子、獅子、天秤、射手、水瓶(男性星座)と、牡牛、蟹、乙女、蠍、山羊、魚(女性星座)。つまり火と風が男性星座で、地と水が女性星座であるというのも、そのエレメントの資質から言って実に分かり易いですね。

 

 若干説明が前後しましたが、星座や惑星についてもですが、それぞれが司っている本来の意味というものを手がかりに自由に解釈を広げ、自分なりに、あるいは占星術のハウスについてWebで検索してみて、それぞれのサイトで扱われている解釈について、様々に思考を巡らせてみるというのも一つの楽しみ方かもしれません(笑)。


 こういった、それぞれにきちんと意味のある惑星と星座とハウスとが、反時計回りのホロスコープ上に様々に位置し、どこの星座にどの星があるのか、あるいはどのハウスが何座でどの星が入っているか、さらには星と星との角度(アスペクト)をも加味しながら、それぞれの要素から重層的に占っていきます。


 12の星座(サイン)は、それぞれお国柄の違う住所アドレスそのもの。そして、そこに様々に散らばり位置する惑星たちは、入っているその星座サインの性質を各々帯びてきます。例えば関西出身なら関西弁を、東北出身なら東北訛りを、といったように(笑)。その神々……それぞれの惑星は、そのお国柄さながらの言葉で喋り、国によって各々の文化があるように、それぞれ異なる資質を持ちます。さらに12のハウスの意味合いも含めると、それこそ十人十色の星の物語が文字通り、人の数だけ存在することに。


 第1室のアセンダント(ASC)が意味する東の地平線上から、星々は天空そらをめぐり、第10室のMC(メディウムコエリの意)天頂へと。そしてその子午線を過ぎ、星が沈む西の地平線のディセンダント(DEC)へ。MCの反対側のICは天底で第4室が司ります。家庭や故郷を意味する4室が12室と同じ終末宮を暗示させるのも非常に興味深い。その夜の底を駆け上がり、そして再び夜明けの東の空へと――。


 その太陽の通り道である、夜明けと黄昏とを繰り返す一日の循環は、そのまま人の一生にも相当し、さながら一枚のホロスコープから見出せるそれは万物の時間の循環であり、生と死の無限の世界そのものだとも思えます。そこに星々が織り成す、ソフトハードそれぞれのアスペクト線なども加えると、その幾何学的な図形もようが、まるで生きているもののように幾重にも浮かび上がり……。


 こうしたホロスコープの魅せる重層的、いや重奏的な世界に遊ぶことは様々なインスピレーションを開花させ(私自身まだその境地に達してませんが)慣れてくると様々な事柄が見えてくるように。星座サインやハウスの意味、そしてアクティブにそこに位置する惑星をどう捉えるか。


 それは持てる想像力を駆使して、そこに立ち現れる“真実”を探る作業でもあります。宇宙やそこに散らばっている星々は、ただそこに存在しているというだけでなく、やはり何らかの意味を持っているのだと思います。それらと実は同じ物質でできている私たち地上のあらゆるものも、常にその引力によって引き合っており、それらの星々と全く無関係であるなどということはありえません。


 その大いなる宇宙や星々と私たちとの関係性を占っていくのが占星術。それら惑星や星座などが直接私たちに影響している、というよりは、いわば同時性というシンクロニシティによって深く影響し合っているのだと思います。その引力そのものの同時性が、人の魂までも司っている所以で、世に言う「引き寄せの法則」などが、もしかしたら存在しているのかもしれません。


 その意味でも占星術は、人の心や目に見える現実を超えた「精神哲学」でもあるのではないかと考えています。たとえば、この私たち自身を含め宇宙由来の物質でもある、パワーストーンと呼ばれる天然の鉱石たちが、人の心を守ったり勇気づけたりすることもできるのではないかと。石というのは物質がギュッと凝縮された状態の最たるもので、そこに押し込められている圧力こそが、力そのものを宿した天然鉱石の、文字通り「パワーストーン」と呼ばれる所以なのかもしれません。


 個人的には、未だもって、こうしたホロチャートの見方に関して熟達できているというわけではありませんが、それでも興味と想像力の尽きない世界が、そこに幾重にも広がっていると思えるわけです。そして、その宇宙を解読したいと様々に想像力を巡らせてみることこそが、その「星読み」の近道なのかもしれませんね。


 因みに星の角度(アスペクト)は、メジャーアスペクトとして、


 ソフトアスペクト=トライン(120度)セクスタイル(60度)

 ハードアスペクト=オポジション(180度)スクエア(90度)


 ※マイナーアスペクトも45度(セミスクエア)や72度(クインタイル)135度(セスキコードレート)や144度(バイクインタイル)など、そして運命的な葛藤や困難、矛盾などを表す150度(インコンジャクト、クインカンクス)などがありますが、150度以外は、特殊な場合以外、それほど頻繁には扱われない。


 そして重なる星によってソフトハードともに双方の意味合いのあるコンジャンクション(0度)は、見かけ上、星と星とが重なっている状態で「合」とも言いますが、これらのアスペクトの中でも最も強力!その反対に星と星とが対峙し向かい合うオポジション(180度)も同等の力を秘めており、文字通り互いに引っ張り合う引力によって火花を散らし、思いもよらぬパワーを発揮したりも。


 60度や、その倍の120度は物事がストレスなくスムーズに運ぶ状態で、昔々の占星術では「幸運の角度」と言われてきましたが、何事もそうは単純なものではなく、一見幸運と思える状態でもいつしか怠慢を招き、そこに思わぬ問題を孕んだりも(因みに小保方晴子さんのホロスコープは、太陽と海王星の緩いスクエア以外、ハードな角度が見当たらず、この120度のトラインと60度のセクスタイルが組み合わさった小三角という形がめだっていて、よくも悪くも安易に騒動を引き起こすこの方ならではの星の配置だなぁと……苦笑)。


 しかし反面、昔は凶意であるとされたスクエアやオポジションなどのハードアスペクトは決して不幸を招くものではなく一見して困難と思えるような状況でも逆境をチャンスに変え、現状を打破することのできる強い力を秘めていたりもします。実際、様々な障害やトラブルを乗り越えてきた人の方が、そうでない人より数倍芯が強く心の強さを持っているということは確かに言えることで、決して見かけ上の吉凶で判断し占うものではないことがよくわかります。


 たとえウィークポイントであっても自分自身の力に変えていけるということは、スクエア二つとオポジション一つが組み合わさったT(字)スクエアという特殊アスペクトの形(コンフィギュレーション)を自身のチャートに持っている私自身としても、とても心強い限り(+そのオポジションに調停二つがダブルでたすき掛けになったクリスタルという図形ではありますが)。生きるということは、言葉通り辛いことでもありますが、だからこその喜びもあり、その痛みこそは真に生きている証でもある。


 そういった生きる上での精神論までも如実に思い起こさせてくれる占星術のホロスコープは、言ってみれば世界そのものであり、数多の人間哲学をも色濃く含んで、あらためて人の生きる意味とは?といったことまで深く考えさせてくれる、まさに痒い所に手が届くスグレモノ!(笑)なのです。


 星占いを「当たる当たらない」といった判断基準で捉え、雑誌やWebにて今や売り物となる占いコンテンツは、そういった第一に個々人のユーザーの心の悩みを直に解決させるものばかりなのですが、それを受け取る側がもっとユニークでオリジナルな解釈で考えるのならば……ただ単にそういったものに終わらない奥深さや面白さを、占星術というものは本来秘めているのではないかと思うのです。


 つまり、表現の仕方によっては、もっと星占いを目に見えて面白く五感に訴えることのできる、心躍るエンターテインメントそのものに姿を変え、文字通り「魅せる」星占いにする事も可能なのではないかと!ある意味これは主観ですが、ホロスコープって円形の五線紙?そこに乗るメロディである音符の星々が、星座サインやハウスがベースの伴奏を幾重にも奏でる中で様々に主張しあう歌うような、それらはそれこそ星の音楽を奏でているのではないかと……。


 そんな独創的な想像まで駆り立ててくれ、その占星音楽に占う言葉を歌詞よろしく組み上げて――。上述の通り、星の表現手段である言葉そのものも幾つもの解釈が存在し得るもので、だからこそ占星術やホロスコープは、どんなことをも表現しうる優れた楽器ツールなのだと。


 占いを占いとしてそのまま扱うことも一つの表現手段でしょうが、その世界をもっと広げ、占星術の重厚かつ細密な世界をさらに聴覚にも訴えることのできるものに変化させてみる――。五感の牡牛座ならではの海王星(アート)の使い方かもしれませんが、もし本当にこれができたなら、ものすごい占い革命に?


 ……いや、単に誰もついて来れなかったりして(爆)。


 それでも、そもそも占いとポエム(そして音楽も)は、その表現という土俵で考えるならば、非常に似通ったものを持つもの。その意味でのポエティックな「占星音楽(ほし・うた・うらない)」。……まだ具体的な形には出来ていませんが、占い詩作(作詞)双方のインスピレーションやイマジネーションを駆使することさえできれば、それは案外簡単に、あなた自身を楽しませることのできる一コンテンツへと昇華させることができるかもしれません。


 ということで、ガンバリマス(死なない程度に、笑)。

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