第46話 商人の心意気
次の日もその次の日も街を過ぎるごとに魔物の数は増え続ける。この強い荷馬車の戦闘員も俺たちも負傷が続く。
どこまできたんだろうか。戦いに次ぐ戦いにで荷馬車に揺られ続けている毎日が永遠のように続く。戦闘に時間をとってしまい、なかなか進まないからか、もう何日経ったかわからなくなった。
宿屋で休んでいる時にニタに聞く。
「なあ、今どこ?」
相変わらず地図がわからない俺。
聞いてもどう反応していいかわからないんだが。近づいてたらそれはそれで微妙だし、遠かったらまだこれがまだまだ続くんだとうんざりするんだろう。
「今はここだね」
俺が朦朧として戦っている間に荷馬車は相当進んでいた。もう、俺でもわかる。あと街四つでテルーニャだ。
明日か明後日で、ニタの目的地だ。
「そうか。ありがとう」
このありがとうには違う気持ちもこもっていた。最初は俺がニタを守る役かよって思ったのに、まさかあのニタがこんなにすごい魔法使いになるなんてな。街につけば別れか。はじめは仕方なくだったのに。俺には大きな存在になっていた。友達ってこんな存在なのか。いや、それ以上か。命を預けて旅を続けてたんだから。
ダメだ! まだついてないのに感傷的だぞ! 今は明日からの魔物戦だ。
朝から出発。街の外に出て行く。お! あれが闘技場か。街から少し離れた場所にあった。たしかに紫色の煙が上がってるな、魔物の巣だな。
あそこになんかある! 取りにいけ勇者よ! とか占い師に言われなくてよかった。絶対に入りたくない。
なかなか進まない。三つ街を進んでここまでと諦めたみたいだ。もう暗くなってる。ここにもかなり強引に来た感じだ。いつもならば手前で止まってるのに。
荷馬車を降りると声をかけられた。
「すまない。勇者!」
「え?」
「これ以上はもう進めない。申し訳ない。テルーニャに連れて行ってあげたかったんだが」
もしかして特産品が、って理由は嘘で、この商人俺たちを魔王の城に連れて行くためにここまで無理して来てくれたのか?
この荷馬車に乗っていた剣士も魔法使いも魔術師ももうボロボロになっていた。だから、判断したんだろう。帰りもあるんだ。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとう」
俺たち勇者一行は一斉に頭を下げた。いかに彼らが無理をしていたか一緒に戦って知っているから。
「おう! 勇者伝説楽しみにしてるからな!」
部屋に入りルートに言う。
「あの荷馬車の商人と剣士と魔法使いと魔術師のこともちゃんと書けよ!」
「ああ、もちろんだ」
「明日は休むんだから早く寝てくれよ。夜中いっつも灯りつけてんだから」
「すみません。灯りついてると寝れなくて」
ニタが謝るとこじゃない。
「トオルはいつもグスッり寝てるじゃないか」
「いいから早く寝ろ。明日書け! ルート」
あと一つ街を行くだけだが、どれだけ険しい道になるかわからない。なので、明日は休憩にした。俺は逃げてるんだろうか。魔王の城から、魔王を倒すことから、勇者ということから。
ルートの呪文で服が直るのに、買い物することを辞めない三人娘。すでに一人は最初から服の増量になっていたけど。もう店員になってもいいかもって自分を褒めてあげたい。ここまでの激闘にもめげずに、俺の勧める服や本人を褒めては無難な服を勧める俺の努力。幸いここは大きな街ではなかった。なので、トリッキーな服は少なくて助かった。あの商人大丈夫かな? 街が大きいところで荷馬車を到着させることが多いから、儲けになっただろうか? つい心配してしまう。俺らにも報酬まで払ってくれたし。
船長といいあの商人といい、勇者は支えられて旅をしてるんだな。だから勇者伝説はあるのかな?
小さい街だったから早めに宿屋に帰り部屋で休んでいた。
ルートが一心不乱に勇者伝説を書いている。この書いてる伝説で次の勇者が支えられて旅をするんだろうか。
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