第32話 ルート

嫌だ、入れて、を俺と魔術師は繰り返し街へと戻る。もちろん魔物に襲われたら戦闘だけど、ルートは魔術師らしくジュジュと一緒に後ろにいる。マジ役立たずだ。魔術師の回復魔法も船で見てきた。ジュジュとは比べられないくらいだ。足手まといにしかならないただの夢を忘れられない男の為に許可する気になれない。


でも、街にもうすぐ着く時にリンがそばにやって来た。


「ねえ、トオル。言ったらダメなんだけど。あの魔術師のルートは仲間になるんだけど……まあ、かなり怪しいんだけど」


リン、やっぱり勇者伝説を読んで新しい仲間の件知ってたな。言ったらダメって、俺に塔のこと船長は言ってたけどな、バッチリ。船長、どうせなら仲間の件も言って……欲しくはなかったか。やる気がそげるどころじゃなく、塔攻略自体行きたくなくなるな。この新メンバー。


「ああ! もうわかった! ただし! ルートは別の部屋だからな!」


まだ怪しい雰囲気満載の奴と同じ部屋は嫌だった。……が、俺が甘かった。


今日は塔に行っていたので旅は明日からとなるので、アリストゼンにもう一泊となる。

ニタに今後の予定を聞く。俺って無計画な勇者だな。ニタがいなかったらまだ村の周りを歩いてたよ。絶対。


「なあ、ニタこれからどうやって移動するんだ?」


俺の理想は飛行船! 魔法の飛行船でささっと魔王の城の近くの街まで移動。ゲームにもあるじゃない? そういうの!


「ああ、荷馬車に乗せてもらって街から街へと移動になるね。多分今日みたいに魔物の群れに囲まれるから、その度に戦闘になるから、戦えるって言って乗せてもらおう。みんな剣士や魔法使いに魔術師をのせて移動してるから」


俺の安易な発想は打ち破られた。また戦闘に次ぐ戦闘。しかも荷馬車に揺られて。打ち破られただけではすまなかった。

まあ、このまますんなりついても魔王の前になど立てないけど。さらさら勝てる気がしない。塔のボスキャラを想像して冷や汗かいてた勇者じゃ無理だ。



トントン!

ん? 誰かなんかあったのか?


「はい」


ガチャ

って、入ってきたのはルートだった。手には紙の束がある。嫌な予感しかしない。



時折メガネを押し上げ、いままでの俺たちの旅をニタに聞いてるルート。ニタ、お前の人の良さはわかった。そして、ポジティブなのも。あの旅の出だしをそんないい風に取れるっていいよ、うん、それ見習いたいよ。だけどさ、俺もう眠いんだ。疲れたし。一応塔攻略って緊張するからさ。だから、頼む俺を寝かせてくれ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る