第11話 いざ船旅へ

 翌日は船の交渉になった。船の料金がかなりの金額になったんで、戦闘できるとか治癒できるとかを売りに値切る。魔物が出てくるから、船の値段が高額になったと聞いたからだ。ちょっと船の上でも戦闘するのかと、うんざりするけど仕方ない。このまま歩いて行くよりはましか。

 だけど、どう見ても怪しいし弱そうな集団だ。どこも受け入れてくれない。ヤバイよ。思ったより難航してるよ船に乗る前から。




「おーい! 坊主達乗る船ないのか?」


 もう無理なんじゃないかと肩を落としていたら声をかけられた。船の上だ。見るといかにも船乗りだ! って男がこっちを見ている。男は体格もよく大柄で真っ茶色な短髪に細く切れ長な黒い目をして半袖をさらに腕まくりしている。

「はい。乗せてもらえますか? 戦いますんで! 治癒もできます!」

 散々言って来たセリフを言う。

「アリストゼンまでで良かったらいいぞ!」

「アリストゼンってどこだ、ニケ?」

 小声でニケに聞く。

「昨日僕が言ったところの辺り」

「はい。お願いします!」

 今度は大声で男に言った。

「それじゃあ、乗って来い!」

「はい!」

 やった。どうなる事かと思ってたけどなんとか船に乗れた。あれ? 料金交渉してないよな?




 乗って理由がわかった。

「いやー助かったよ。剣士も魔法使いもなかなか雇えなくって。じゃあ! よろしくな!」

 船長はそれだけ言うとさっさとどこかへ行ってしまった。雇われたのか? 乗客なのか? 疑問だらけの出港となった。




 出港後にすぐにわかった。雇われてるよ。戦闘員じゃないのかよ! 船乗りも不足してるなんて言わないってないだろ。

 慣れない船で働く俺。ジュジュとリンとツバキが免除なのはわかるが、なぜニタもなんだ!

 働く俺に暇そうに話をしてる4人。理不尽だ!



 *



 岸を離れてしばらくすると、やっと仕事から開放された。


 ふうと息ついて休んでいると、声があがる。


「魔物が来たぞー! 先端!」

 見張りだろうか、上の見張り台らしきところから声が響き渡ってきた。

 また仕事だよ。今度はニタもリンもそして、嬉しそうにツバキも参加。ジュジュには避難するように指示を出してる。


 うわー。いきなり? いや、俺の想像だったよ。いや想像以上の迫力だけど。サメ。いきなりこれ出てくる? 鋭く何本もいや何十本いや百いくね。その牙剥き出しで船を登って来るよ。あーあ。船の先端完全に紫色だよ。例の煙でもう紫色になってるよ。何匹いるんだよ! サメ!


 剣士も魔法使いも船の先端へ向う。

 牙に注意しつつ次々に魔物をなぎ払う。船に乗せたらややこしくなるだろう、死骸の心配。後始末がな。登ってきた魔物をどんどんと切って海へと落とす。その隙にみんなの様子を見る。

 別々に戦うのははじめてだから心配だ。

 ツバキは大丈夫か? と見ると、やっぱり腕ぐらいバッサリとはいかなくて傷を負わせる程度だが、船に登って来てる魔物なので海に落ちて行く。どうやら大丈夫そうだ。

 ニタはと見るとこんがり焼いてる。魔物を。どうやら海の魔物は火には弱いらしく焼かれると悲鳴をあげて海へと落ちて行く。ニタ、意外に戦力となってるし。

 リンも岩をゴロゴロと落としてる。岩で諦めたようだ。数多いから時間ないからな。

 剣士もツバキぐらいの傷を負わせる程度だ。そんなもんなのか。

 魔法使いはやっぱり迫力ある。一気に何匹も燃やしてる。やっぱり火なんだな。って、やっぱり俺も魔法使いがよかったよ。




 一匹、一匹切って行くが、なにせこのつるぎが重い。こんなに大量だともう腕の感覚ないんだけど。もう限界だってところで魔物の襲撃は終わった。




 危ないんだけど。船の旅、いや移動?

 どうやら一発で魔物を切れる俺が珍しいのか剣士がチラチラ見てくる。あ、つるぎの方だろうな。まあ、そうだろうな俺が剣士なら羨ましいよな。ただし! 魔法使いの方がずっといいが!



 *



 それからも休憩出来たと思えば魔物の群れに襲われる。いったい海の中どうなってるんだよ、って思いたくなる。昆布なのかワカメなのかって魔物や、また貝だけど巻いてる奴、貝の頭の下から何かウニャウニャ出てて気持ち悪って思ったらそれが毒を差し込んでくる。俺は毒にやられて、涙目のジュジュに浄化してもらった。見た目で侮ったら怖いぞ、魔物。全身で海老を表現してる魔物から、何でいるんだ一つ目岩! と、海からなぜ出てくるんだと心の中で突っ込みながら叩き切る。




 疲れた。予想以上の魔物の襲撃。こんなの毎日続くのか。道理で誰も乗せてくれないよな、他の船。戦力にならないと話にならない。それにしてもここの船長一緒に戦ってるが、よく乗せたな俺たちを。どう見ても貧弱な一団なのに。まあ、おかげで助かったけど。



 *



 夜も、もちろん襲撃はある。夜警で見張り台には時々交代が入るが、剣士も魔法使いも少ないので半分で一晩中勤務となる。もう勤務だよ、これ。

 そして、昼番にはリンとツバキそして、ニタ。

 俺は夜番なのでそのまま甲板での待機。ニタとリンとツバキとジュジュは眠りについただろう。



 魔法でつけた明かりを灯して周囲を明るくする。どっから魔物が登ってくるかわからないからだけど、これって魔物呼び寄せてない?




「魔物だー! 右側から登ってくる!」

 夜警の声が響く。

 夜の当番の者が右側に駆け寄る。


 おいおい。まじか? これって何かの冗談ですか? 光ってるよイカ。あーテレビで見たよ、ホタルイカ漁。光に寄ってくるって。

 ホタルイカかどうかはわからないが、イカの魔物は光ってる。ただし紫色に。どこまでも紫色だね。イカって怖いなデカイと。


 あー。もう足なのか手なのか生えてるウニョウニョで攻撃してくる。危ないよ。昼間の貝を思い出す。ウニョウニョ嫌だ。人数が減ってるから厳しい戦いだ。よくこれで出港したよ船長。その船長も隣で一緒に戦ってるがタフだな、見た目通りに。


 うわ! ちょっとした油断で、またウニョウニョに腕をやられた。が、まだイカ、いや魔物はいる。痛いが切り続ける。ああ、感覚なくなってきたよ。やられたのは左腕。このつるぎはデカイから片方の腕じゃ振り回せない。うりゃー! 根性だ! イカに船を乗っ取られてたまるか!

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