思いつきのSS

紅暁 凌 Kogyo Ryo

第1話 ゾン二君の苦悩 1


これでもかと朽ちた体に、腐敗臭、骨が見えるほどに壊れた皮膚、顔の色は青や紫などの寒色系、髪はまばらで生えているというより付いている者が大多数。



この者達は、なんだろう。


ゾンビである。


ここは、ゾンビ就職センター。その入り口には、強烈な臭いを放つ沢山のゾンビが、一刻も早く誰よりも良い仕事に就くために、集まっていた。

そこの中に一人ぽつねんと立っている(ゾンビの)少年がいた。




「ああ、心配だなぁ。」

ぼくは今、ソワソワしている。

なぜなら、これからぼくの初めての、就職活動が始まるからなんだ。

7人兄弟の次男である僕は、仕事中に亡くなってしまった兄の、ゾン一兄いちにぃに代わって、一家のために働くことになった。

働く理由はもちろん、家計が厳しいから。

家計が厳しい理由は、両親がいない、からじゃなくて。両親が働いても、足りないから。ぼくを含めて、ゾン一兄いちにぃを引いた6人兄弟と、両親合わせた8人を養うには全然足りないんだ。


ソワソワしていると、どんっと、誰かにぶつかってしまった。

見ると、とっても大きな黒色のレアなギィレンティア(就職には、この種が有利だと言われいているんだ。)が、立っていた。

「おいおい、完璧なこの俺に何してくれちゃってんの?」

「すみません。」

「う〜ん?ちょっと、こっちこよっかぁ〜?」

ぼくがギィレンティアに連れてこられたのは、ブマンスィの住む、寂れた裏路地。

「どーすんの?」

「えっ...」

「えっ。じゃなくてさぁ〜?」

ギィレンティアの怒る時の癖。大地を踏みしめる癖が、ギシギシと周りの物や草に影響を与える。

「ほらほらぁ〜。なんかあるでしょ〜?」

マズイ。と思った。貧しいブマンスィは、自然物や身の回りの物を大切にするんだ。大切にしないやつらには、死よりも苦しい罰を与える。「ネェネェ〜?何考えてんの?」

しょうがない。

ぼくは、ギィレンティアのためを思い、ギィレンティアの心臓を一瞬で取り出した。

「カッ。」

ギィレンティアは、ゆっくりと倒れた。

「ふぅ。」

ギィレンティアの心臓を、そばに置いて、ぼくは就職センターへ向かった。


ぼくはもとの場所に戻って、結局、またソワソワしていた。

話を戻すと。

今までは、さっき言ったゾン一兄いちにぃが働いくれた。ゾン一兄いちにぃは一人で、父さんと母さんの2倍以上、3人合わせて、なんとか暮らしていけるくらい稼いでくれていた。

しかし、就職先で治療が間に合わず、46年間熟成させてあった24歳の身体のゾン一兄いちにぃは、16歳で亡くなってしまった。

ゾン一兄いちにぃは、家族の中で一番の美男子だった。

仕事は見た目重視の世界で、ゾン一兄いちにぃは家族の働き手として、とても頼りにされていた。

そんなゾン一兄いちにぃが、いなくなってしまった今、兄弟の一番上のぼくは、その後を継がなければならないんだ。ゾン一兄いちにぃのやっていたことを、やらなければいけないんだ。



就職センターの前では、沢山の人が集まっている。結構集まっているけど、就職先が見つかるかな。あっ、そう言えば、就職センターの人から聞いた話では、募集数の100000倍の数が、毎日来る種もあるそうだ。だから、ぼくたちはまだラッキーだと思った方がいいんだと。ぼくらの場合は、募集数の約99999倍だから。


しかし、現状は厳しい。

ぼくらの仕事は「見せる腐敗」がモットーとしているんだ。

つまりは、腐っていても目に入れられる。腐っていても、長時間見ることができる。

これが、「見せる腐敗」の最低限であると言われている。

本当に腐っていては、職にありつけない。

本当に腐っていると、「見せる腐敗」じゃなくなるから。

それに生きている(?)間にも、腐敗は進んでいく。

そこも、上手に身体をコントロールしながら、働かなくてはならない。元々の見た目が良くても、見た目が変わることで、仕事を無くしてしまうんだ。


だけど、ぼくは今日の為に、身体を手入れしてきていない。ゾン一兄いちにぃ完全埋葬かそうが終わって、すぐにここに来たんだ。

服は、ゾン一兄いちにぃ完全埋葬かそうでたくさん働いたおかげで、いい感じにかっこ良くなっている。



就職センターの門が開いた。

全体がどっ、と動く。

ぼくのところが動く前に、軽く全身の身なりを整える。


就職センターの敷地内に入ると、まず最初に見えてくるのは、正面にある「総合就職館」。そこに行くまでに、右側は一般系の仕事を探せる各館集合地帯、左側は専門系の仕事を探せる各館の集合地帯となっている。ぼくが仕事を探すところは、総合就職館の方。


みんなゆっくりと歩いているよう見えるが、実は全くそうではない。就職の為に、今ある自分の最高の状態にキープしながら歩いているんだ。ぼくは、あまり手入れができていないから、そんなことは気にせずに、ずんずんと突き進む。

ここで、誰かに当たってしまうことがあってはダメなんだ。当たった時に、その誰かのベストな状態を崩してしまうかもしれないから。そして、さっきみたいな事になるんだ。


同じ轍を踏まないように、最大限に注意を払って、全てを抜けた先に総合就職館のドアが待っていた。すでに、誰かが開け放ったドアを抜け、真正面の階段を上がる。全体的に白が多い総合就職館の中は、本が読めるか読めないか程度の明かりしかない。その薄暗い中を、また、誰にも当たらないように、進むんだ。


A-2

ドアの前は...諦めよう。

数を確認する前に、大体は把握できた。

ここは、物凄く時間がかかる。


B-2

そこのドアの前は、うぅっ。

最高レベルにいるはずの、強烈な外見を持った者達が集まっていた。

その中の一人が、ぼくに向かって叫んだ。

「おdjぅぢすうえjfkcいdldけうlsーzlxんckfkdっmz!!」

ついには、ぼくのところまで寄ってきた。

あぁ、絡まれちゃった...

「jづwb$ぢfやldけkf?んcjyしうぃぢwん¥ふぃfybdじゅxhdgy?」

ぼくは、相手がなにを言っているか分かる。

けど、相手の言葉を使って、喋ることはできない。それでも、相手は分かってるのか分かってないのか、構わず話しかけてくる。

「ねyrんふぃあjdhっywhjぃgm。」

肩を無理矢理組まされる。

「じkづhrkぅdぼづdhfjdjdっhふぃdkdkx.......」

と、語りながらある方向を指す。

その方向には、ビュッギーグの親子がいた。

「jぢwんcおhshrpxjすえbぃcんzkpsぇうrkふぃsljcきyhg」

コレはもう、間に合わない。

「€dgbcx%gsjdpswfbzvxcxs!jhyfgs@sjmfcn!」

相手は、爆発した。ぼくは、話しかけてくる者がいなくなったことは、嬉しかった。が、飛沫がちょびっとかかったのは、少し困った。


C-2

ここは、意外と空いているけど、

もう一つ向こうまであるみたいだから、そこまで行ってみよう。


D-2

ドアの前に、誰もいない。

中の様子はよくわからない(全てそういう、造りのドアになっている。)けど、取り敢えず開けよう。

白く、固い鉄のドアを開ける。誰もいない。ラッキーだ!今まで色々あったけど、早く進んできたおかげで一番になれた!

一度閉めて、最後の身なりの整えをし、ドアをノックして中に入る。


書類に目を向けていた、男の人間が言った。

きっと面接官なんじゃないかな。

「名前は?」

面接官が、ガラスの向こう側から言った。

「ゾンヴィ・ドウディーブ・ゾンです。」

面接官は、書類に書き込みながら、次の質問をした。

「20年以下かい?」

「いいえ、24年です。」

「今いくつ?」

「14です。」

就職センターの全員が、人間。

僕らの嗅覚と、人間の嗅覚では、人間の嗅覚の方が断然、人間の方が利く。

ぼくらの臭いがキツイから、部屋をガラスで仕切っているんだけど、なんか、実験動物みたいで、ぼくは嫌なんだ。

「うーん...まぁ、選べる職業は少ないけど、何か希望はある?」

「できるだけ、レベルが高いところが......」

ぼくがそう言うと、面接官は頭を掻いた。

「君に...合いそうなのは.........っと。」

パタンパタンとページを飛ばす。

「まぁ、まずは外見適正検査を受けてきてみてくれないかな?そこから始めよう。」

「あ...はい。分かりました。」

「場所わかるかい?」

「確か...ここの地下ですよね?」

「そうそう。君の番号は、31ね。」

「はい。」



元来た道を辿り、途中で地下へと向かう階段を下り、さっきよりももっと薄暗い中を歩いた。

外見適正検査室

そう書かれた部屋のドアを開ける。

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