第6話

「ほら、食べて」口の中にジャリッとした感触と、砂糖の味が広がる。 これは寒天ゼリーだ。

それにしてもここはどこだろう、私は目隠しをされていて、一体今自分がどこにいるのかわからない。 事務所が受けてきた仕事で、確か”どこにつくかはわからない、闇旅ツアー”とか言うものだったと思うが、ともかく、どこかはわからないところに連れて行かれて、そこがどこか当てる、という企画だったと思う。 最初に何人かの参加者と高速バスに乗り込んだところまではわかるのだが、その後、電車を2回、飛行機を1回、さらにバスに乗り、船に1回乗った。 多分。 目隠しで真っ暗闇なので、途中から感覚がなくなってくるのだ。 食事は食べさせてもらえるが、目隠しだと何を食べているのかわからず、味もあまり美味しく感じなかった。 1回は確かにカップ麺だと思うんだが…、それにしても、おやつの時間にもらえるこの寒天ゼリーはおいしい。 こんなに甘いものがおいしいなんて、昔の人が砂糖を貴重なものとしていたのがわかる気がする。

「さあ、着きましたー」

声が聞こえ、目隠しが外された。 久しぶりの光に眩しくて顔をしかめる。 しばらく立って、まわりをみると、まるで知らない街角で、ねじれたような形のビルの目の前に立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る