第3話

ある日、空からゼリーが降ってきた。

大きなゼリーだ、街をすっぽり覆ってしまった。

不思議なことにその中でも呼吸はでき、普通に生活もできた。

人々も最初は戸惑っていたが、すぐに慣れた。

ところが困ったことが一つあった。

喋ったセリフが吹き出しになってしまうのだ。

マンガでみる、あの吹き出しである。

大きな声でしゃべれば、大きな吹き出しが出る。

叫べば、とげとげの吹き出しが出る。

先日はそのとげとげが頬に刺さって、けがをしてしまった。

けれどもそれもすぐに、慣れてしまった。

人間慣れれば慣れるものだ。

原因はわからない。

やがて突然、ゼリーはまた空中に去っていった。

浮かんでいくゼリーの中にはたくさんのセリフが吹き出しになって残っていた。

とげとげの、まるいの、ふわふわしたの、縦書き、横書き、ひらがな、カタカナ、英語など…。

浮かんで小さくなっていくゼリーを眺めた後、人々はまた普通に生活し始めた。

ところが、セリフは相変わらず吹き出しになったままだ。

そして、そのセリフはすぐに地面に落ちてしまうのだった。

セリフは町に積み重なる。

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