ブーケトス

 結婚式が終わり、協会の前で新婦が手にしたブーケを後ろ向きに投げた。それは綺麗な放物線を描き、二人の女性の間へと向かっていった。

 同時に手を伸ばす二人。そして、同時にブーケを掴んだ。否、お互いの手をブーケ越しに握った。

 二人は刹那の間、見つめ合うと、どちらからともなく微笑んだ。

「ねぇ、次に結婚するのってどっちになるのかな?」

「二人同時だったから、二人?」

「だよね?」

 周囲にいた人たちはそんな二人を気にする様子もなく、披露宴会場へと向かっていった。

 二人はそれを追うこともなく、協会を見上げた。

 二人の共通の知人である新婦の姿を思い出す。純白のウエディングドレスに身を包み、幸せそうに微笑んでいた。

 自分達には手に入れることのできない幸せ。それを彼女たちは羨ましく感じていた。けれども、法律的には一緒にはなれなくとも、いつまでも、永遠に、共にいたい、その気持ちは共有していた。

「ねぇ、結婚はできないけどさ、その、式だけはあげない?」

「え?」

「ほら、やっぱりさ、ああいうの見ちゃうと憧れちゃうんだよね」

「そうだね。私も羨ましかった」

「女同士の結婚式、挙げさせてくれるところ、探さないとね」

「もし、国内がダメでも、ヨーロッパとか、アメリカとかだったらありそうだし、絶対に、式挙げようね?」

「うん」

 二人は手を繋いだまま披露宴会場にゆっくりと向かっていった。

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