1 カオリ

 窓もない狭い部屋で。接客の合間に休憩をしたりメイクを直したり食事したり、着替えたりする場所。話したことはないけれど大好きなユリちゃんが入ってきた。

 ユリちゃんは部屋に入ると座りもしないで


「宝くじが当たったらどーする?」


 と言った。


 私はTVの前のいつもの場所で、みんなが答えるのを聞いていた。

 ほかの女の子たちがなんて言っていたのか覚えていない。三人の女の子たちが答え終わると、ユリちゃんは


「あたしはここにいるみんなを解放する。みんなのバンスを払って店を辞めさせる」


 と言った。


 笑顔のユリちゃんと目が合った。


 そのときだけ、その狭い部屋には暖かい陽が射していて、私たちを照らしているかのようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る