博士課程院生のリアルな不安感と、小さな希望。

「私」は博士課程四年目。自分の、研究者としての才能に限界を感じている。
後輩の修士二年の斎藤くんは若くて実力に溢れ、未来は輝いているように見える。

博士号を取らなければ研究職のスタートラインに立つこともできないが、取っても研究者として職に就ける可能性は低い。そもそも、博士号を本当に取れるのか。
かといって、自分の限界を認め、諦めて方向転換するのも怖い。八方塞がりの現状維持でうだうだしていても、無情にも時は過ぎていく。

……という、博士課程院生の宙ぶらりんな不安感が見事に描かれていて、胃が痛い……。
そんな中、後輩が見せてくれた小さな希望は、何も解決したわけではないけれど、生きていてもいいんだな、と思わせてくれます。
素晴らしい作品でした。

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