Ⅶ-㐂-7/8 By. Time Report Band 「タイトル意味不明だけど読んだらそこそこ面白めの群像劇だった件」(*゚∀゚)

いましん

【Ⅰ】

頭がくらくらする。臭いがする。血の臭いだ。

横たわっている。動いている。……運ばれている?

そうか。車。事故ったのか。

ああ痛い。痛いってこんな感じだったか。とにかく痛い。



今思えば、あの程度の痛みだったのは神経が切れてたか何かしていたのだろうと思う。

比喩でも何でもなく、俺は死にかけていた。

どこか部屋に運ばれ、麻酔を打たれてからは覚えていないが、なんとか生きている。


ただ俺は、視力を失った。



もう何も見えない、というのは淋しいものだ。

まぁ命があるだけ儲けものか。

さて、仕事に戻ろう……とした。無理だった。

いや身体的に動けない訳ではない。怪我は日常茶飯事だ。だが俺の病室にいる看護師と警察が帰してくれなかったのだ。


「だから、イルカさん。あなたは生きているのが不思議なくらい死にかけてたんです。むやみに動かないで下さい。」

イルカというのは俺の名前だ。本名ではないが。

「いや、俺はこれから仕事がある。急がねば上司に怒られる。」

「仕事は今はいいでしょう。それより、事故について何か覚えていることは?」

「さっきから無いと言ってるだろう。」


点いていたラジオから時報が鳴る。急いで行っても仕事には間に合わないか。今日がまだ事故と同じ日であれば、の話だが。

そもそも俺は職業柄、警察という組織が好きではないのだ。殺し屋と警察が仲良く出来るはずがない。

そう、俺は殺し屋だ。自分で言うのもなんだが、そこそこ腕が立つ。今日も官僚の秘書を殺しに行く予定だったのだが……まず目が見えずに殺しは危険すぎるか。


那須と名乗った看護師は続けた。

「それに、イルカさんは失明しているんです。今回あなたを担当してくださった徳田先生も全力を尽くしていましたが……残念ながら……でも、あの状態からここまで元気になるとは驚きですね。」

殺し屋を舐めてもらっちゃ困る。幼少期から殺しの訓練を受けてきた肉体は、常人と同じように考えると痛い目に遭う。

一方、この栗竹とかいう警官は話す。

「この度の事故、さぞ大変なことだったでしょう。警察としては、事故の原因究明にあたっているのですが、何か心当たりはおありで……?」

無い。ずっと無いと言っているのになかなか帰ろうとしない。俺を嵌める巧妙な罠かとも勘ぐったが、そんな様子は見受けられ……いや、聞き受けられなかった。



普通は失明などしたらパニックになってもおかしくないだろう。しかし俺は、死ぬ覚悟で仕事をしている。今更両目が潰れたところで、といった感じだ。それに、普段から暗闇で音を頼りに動く暗殺をしているため、視界ゼロの状況にも慣れている。

ただ、多少、というかそこそこ、仕事には支障が出るな。組織を抜けるというのも簡単ではないし、どうするべきだろうか。

色々考えながら、看護師から目を隠す為のサングラスを貰った。

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