「妹よ、気をつけろ。部屋に蚊がいる……っ!」

私:

「ほんとだ。羽音が聞こえますね。ていっ」


ぱーん。


私:

「殺りましたわ、お兄様」


兄:

「なに、やったかっ」


私:

「殺りました。ところで、どうしてリビングで座禅を組んでいるんです?」


兄:

「精神統一をはかっていた」


私:

「なぜ、精神統一の必要性が?」


兄:

「蚊が俺の皮膚にふれたところで、必殺の一撃を見舞ってやろうと思っていた。だが杞憂だったな……礼を言うぞ」


私:

「お兄様のプライベートでの行動って、実益と結びつかない事ばかりですよね。それから床においた、ピンク色のブタ蚊取り線香、通行のジャマなので退けますね」


兄:

「それな。今日イ○ンで見つけてきたんだけど、可愛くない?」


私:

「蚊取り線香に、可愛さを求めてどうするおつもりですか」


兄:

「うわ……おまえの女子力、低すぎ……?」


私:

「余計なお世話です。殴りますわよ」


兄:

「や、やめろー! 殴るなら、ブタさんではなく、俺をな――嘘だよ。やめろよ。嬉しそうに近づいてくるなよ!!」


私:

「お兄様、肩に蚊が止まっていてよ」



 ――どすっ、どすっ。




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