狭くて息苦しい社会の縮図

学校を始めとする集団の中には見えないルールのようなものがあって、それを守っている限りは安泰だ。内心では馬鹿馬鹿しいと思っていても、適当に笑って周りに合わせておけば居場所は確保される。しかし、そうやって自分を偽りながらへつらって生きていくことが本当に正しい生き方なのだろうか?

この小説では他人の目など一切気に留めない有瀬と、周りに適当に合わせながら居場所を作っている芹目を中心に、誰もがどこかで経験したであろう息苦しい教室のあれこれが語られていきます。簡潔だけど力強い言葉で語られていて引き込まれました。終盤の物語が動くところではその迫力に恐怖さえ感じました。

余談ですが、物語中に出てくる戯曲「人間嫌い」からのオマージュかな?と思われる描写がみられます(「人間嫌い」は未読なのでただの予測です)。有瀬=アルセスト、芹目=セリメーヌなんかの対応関係もありそうです。「人間嫌い」を知っている人が読んだらさらに楽しめるかもしれません。

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