『4点!』『やがて色付く異世界幻想』 著者/畳屋嘉祥
書評レベル『激辛』
タイトル
『やがて色付く異世界幻想』 著者/畳屋嘉祥
キャッチコピー
『世界と僕を、知りに行こう。』
あらすじ
『気が付けば見知らぬ場所に居た。ここはどこなのだろうか。なぜ自分はここにいるのだろうか。どのようにしてここに来たのだろうか。なにを思ってここを訪れたのだろうか。
そして何より、僕は一体誰なのだろうか。
いつどこで生まれたのだろうか。両親はどこにいるのだろうか。誰と共に育ったのだろうか。誰かを愛したことがあるのだろうか。
そんなことも分からないというのに。
────なぜ僕は、魔法というものの存在を知っているのだろうか。
人が指から火を出すような、不可思議な理が存在する世界。
ひとり立ち尽くすまっさらな少年は、様々な人々に出会い、導かれながらひとつひとつ世界のことを知っていく。知らなければならないことも、知っておいたほうがいいことも、知らなくて構わないことも、知らなければよかったことも。
黒の王国、王立学園。学びの街はまっさらな彼に様々な色を流し込んでいく。それはさながら塗り絵のように、やがて色付く異世界幻想。』
ジャンル
ファンタジー
セルフレイティング
残酷描写有り 暴力描写有り
タグ
ライトノベル、異世界、魔法、学園、記憶喪失、異世界転移、カクヨムオンリー、ハイファンタジー
総文字数
113,825文字
公開日
2016年2月13日 18:52
最終更新日
2016年3月23日 20:13
────2016年3月25日18:05現在時点。
文章力★★☆(★×2)読みやすさ
独創性★☆☆(★×1)オリジナリティ
娯楽性★☆☆(★×1)おもしろさ
────合計☆数『4点!』
Twitterにて、激辛を依頼してきた一人目でございます。先に紹介している朝霞さんとは前後していますが、応募は朝霞さんが先、レベルの依頼は畳屋さんが先なのでした。自作の弱点を知りたい。向上心の塊のお二方ですわな。頭が下がる思いです。
さてと。内容に触れてから語りましょう。あらすじやタグにあるように、記憶喪失の彼が目覚めた場所は見知らぬ風景とひどく冷静な自分自身。彼は考える。いくら考えてもなにひとつ自分に関する記憶を思い出せない。そんな彼に残されたのは知識。不思議な知識があった。それが『魔法』なのである。自色を失った彼が世界を知り、塗り替えられていく色合いは幻想色。それが異世界幻想────。
とまあ、簡潔にまとめられるほどに、よくある設定です。さっそく辛口? またまたご冗談を。この作品の見所は絶え間ない心情、情景描写です。緻密といえるほどに遅々とした表現をくどくなく語られています。豊富な語彙というよりも、蓄えられた
ささあ。ここからは激辛だっ!
先にあげたようによくある設定です。記憶喪失の主人公、見知らぬ場所、新たな人間関係を育む物語。どこかで聞いたことがありませんか? これに異世界をプラスされたのが今作品です。なので文章力がなければ見向きもされなかったでしょう。その点は羨ましい。文章力で勝負できているからです。それでも第一節を読み切れば十分でした。心構えはいいですか。たったひと言呟きますよ。
────飽きた。
物語が動いていかない。とても素直に語られているので、目につくもの全てを描写されている気がして『へえ。ふうん。……もういいか』となりました。三人称一元視点で描かれており、主人公の性格も冷静なため文章に温度がない。よくできたフランス映画を深夜に流しているような感じです。バックミュージック的には素晴らしい。背後で声をかけられたすぐに返事ができる、周囲の雑音に負けてしまう、そんな文章になりますかね。
読者は飽き性です。特にWeb小説を読む層は飽きやすい傾向にあります。手にもつ実感のある書籍だと、残りの文量などが想像できるのでゆったりとした展開を受け入れてくれる人も、Web小説は切ってしまいます。理由は簡単です。『完結まで書ききる気があるのか』『途中でやめないか?』『やめるだろうなあ』そういった作家への勝手な想像、信頼がネックとなっているからです。
飽きさせない為の技法は数あれど、とても簡単な方法が回想形式になります。あらゆる指南書では『回想は素人には厳禁』とされていますが、ここでいう回想は今作品の作風を考慮したうえでの技法です。第一節の前などに、終わりから始まる回想形式です。冒頭で『こんなことがあったな。あれは○○だった。そうあれは──』から第一話へと繋げていき、読者にこの結末の流れを読んでもらう。遅々とした展開でも、その文章力が味方になります。いかがでしょうか? ぜひ、考えてみてください。
冷静な人物である主人公と、冷淡な地の文にゆっくりとした展開。それらが作用していき、読者の感情を揺さぶることが弱点になっています。ドキドキしたり、ワクワクしたり、謎を追いかけたりする読者の気持ちを思い出してみましょう。今作品ではない。ハッキリといえます。ない。だからこそ、回想形式です。冒頭に結末をもってきているので、『どうして、この結末になったのか?』という謎が提示されています。これひとつで引っ張るのは難しいのですが、すでに文章力だけで引っ張っているともいえる作品ですからね。
その割に文章力の☆が低いのは気持ちの緩急が少ないからです。削れる場面は削り、緩急をつけた場面展開を意識しましょう。小説は山あり谷ありです。平坦な物語は飽きる。構成力を鍛えると見違えるように高評価になることだけは、間違いなく頷きます。それはもう全力で頷きます。
前回は構成力が抜き出ていた作品の書評でしたが、今回は文章力が抜き出ていた作品でしたねえ。なんでこう、偏りますか。面白いんですけど。
最後にひと言『その描写力、わけてくれ』
八艘跳。(´ω`)
次回の書評は後ほど呟いたあとに追記します。もうすぐ、自作の評価やPVを越えていきそうな毒吐エッセイに嫉妬中な私が寝転がりますよっと。
次回の書評、追記。
『だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-』 著者/ベネ・水代
Twitter 2016年03月25日21:16 呟いた時間です。
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