第38話 特別機動部隊の精鋭たち
上空で黒い塗装のヘリコプターで待機している
「副長、あの
「わかっている。だがこちらではその面々がどういう人物なのか、掴んでいないんだ。唯一、
「へへっ、副長。やつがそんな簡単にくたばるもんですか。それこそ “
緒方は髭をたくわえた巨漢で、口は悪いが視線はずっと下の採掘現場を心配げに見つめている。
「もし “天狗筒” が使用された場合、そのヘリも危ないぞ」
「百も承知でさあ。それより結界が破れないなら、腕ずくでやろうと思ってんですが」
言いながら緒方は待機している部下に視線を向ける。ヘリコプターを操縦する
隊長の緒方をサポートする副隊長の
身体能力に秀でており、体操オリンピックに出れば確実にメダルを獲れると自称している。
あとの二名は二十歳代の女性隊員であった。
「腕ずく? “
「さようで。このところ実戦がなかったんで、みんな鈍ってますからねえ、たまには身体を動かさねえと。また他の公務員に税金泥棒呼ばわりされちまいまさあ」
「フフン、我々が活躍しないほうが、世の中は平和だってことだがな。
よし、緒方隊長、ここからは貴官に一任する。結界内にいる民間人の救出を最優先で、次が
あえて佐々波は藪鮫のことには触れなかった。
「ありがてえ、副長。常に交信できるようにしておきますんで、藪鮫が “天狗筒” を使用する前に一報くだせえ」
「そうだな、いくらかでも走って逃げられる時間が必要だな」
緒方は鼻で笑った。
「冗談言いっこなしですぜ、副長。こちとら、とうにこの命はお国に捧げてまさあ。一回 “天狗筒” の発射ををまじかで観たいって思ってたんですよ」
通信を切ると緒方は部下を睨んだ。
「おぅしっ、副長殿の許可が出た。ここから俺たち “漆黒の鷹” の本領発揮だ。いいかてめえら!」
オウッ!
全員が拳を突き上げた。と緒方は思ったが、女性二人の部下は黙ったまま手鏡を見ながら口紅を塗り直している。
「おいっ、おめえたちゃあ何やってんだ」
やや目尻の上がった掘りの深い面立ちの
「見りゃあわかるでしょ、隊長。お、け、しょう、な、お、しよ」
もうひとりの女子隊員、
「だってえ、保安官の中で一、二を争う超イケメンの藪鮫さまにお会いできるんですよう。
あっ、隊長」
「な、なんだ」
「任務終了したら、藪鮫さまとのツーショットを私のスマホで撮ってくださーい。すぐにフェイスブックに載せるんだからあ」
緒方は頭を抱えた。
「なぜこいつらが “漆黒の鷹” に配属されてるんだ、って顔ですよ隊長」
隣の金剛寺が緒方をのぞき込む。
「わかってる、わかってるよぅ! こう見えても、こいつらがとてつもない戦力だってことはな!」
「さあって、今日もバッチリ決まりましたと。隊長、何やってるんですか、早く “闇土竜” の準備してくださいよ」
祀宮は化粧道具をポーチにしまいながら言う。
緒方はしぶしぶ立ち上がった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます