第24話 増殖する化け物
「副長っ!」
「なんだ」
「現在ターゲットのいる地区を霊波観測しておりますが」
若い男性職員は視線をモニターからはずさず、さらに続ける。
「突然遮断されました!」
「遮断? どういうことだ」
「はい、半径一キロメートルに渡り、何者かが結界を張ったようです」
佐々波は眉間にしわを寄せ、
「ふーん、結界ときたかね。
合羅は楽しそうに言う。
「誰かは知らないけど、民間人の術者でも現れたかい」
「
佐々波の進言に合羅はゆっくり頭をふった。
「何かあれば、藪鮫くんから報告してくるさあ」
〜〜♡♡〜〜
長い眠りから目覚めた
骸骨の口元が引き裂かれたように開き、絞った雑巾のような姿になった作業員が尾からするりと落とされていく。そのたびに膨らんだ腹部が波打つ。
「いったい、奴は本当に疫鬼なのかっ」
ベクは顔面を引きつらせ、叫んだ。
リンメイは歯を食いしばり、顔を何度も横に振る。
「あれは疫鬼だ。だが私の知っている疫鬼ではない」
「じゃあ何なんだ!」
またひとり、疫鬼の尾が横たわる作業員を捕まえる。
「本来なら、甦らせた疫鬼を本国へ連れ帰り、世界に向けて覇権が我々にあることを発信するはずであったのだ。
そうだ! リンメイ、あいつを操るための呪法があるのだろ」
リンメイは何かを思い出そうと固く両目を閉じた。
「疫鬼を
「ま、待て! あれを見ろ」
ベクは指さした。十人ほど作業員を飲み込んだ疫鬼の動きが止まっている。あぐらをかいた細長い両脚の上には弾けそうなほど膨らんだ腹部が大きく揺れ動きだしていた。
「グワァァッ」
骸骨の顔が天を向き、吠えるような轟が響き渡った。すると、
「おおっ」
ベクは驚愕の声をあげた。
ゲハッ!
疫鬼の腹部から喉元が大きく膨らんだかと思うと、粘液をしたたらせながら
蝶の
「やつは、やつは自分の分身を生み出したのか!」
ベクは戦慄する。蛹が膿のように飛び散り、中から現れたのは疫鬼を小ぶりにした化け物であったのだ。
「そうだ、思い出した!」
リンメイは顔を上げた。すかさずベクが言う。
「よし! すぐにその術を使うんだっ」
ところがリンメイは大きく目を見開き、呆けたように口を開けたままだ。
「ち、違う、術ではない」
リンメイは腰を抜かしたように地面に尻を落とす。
「師から聴いていたのに。だ、だめだ! もう手遅れだっ」
つづく
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