こどもの日

「ママ。ちーちゃんもこいのぼりほしいよ」

 住宅街の、あちこちの家に鯉のぼりが飾られているのを見て、娘がわたしの腰に抱きついてきておねだりをはじめた。

「え? こいのぼりは、男の子のためのお祝いなのよ」

「どーして?」

「ほら、3月3日は女の子のお祝いでお雛様飾ったでしょ? だから5月5日は男の子のお祝いで、鯉のぼりを飾るんだよ」

 ちーちゃんは女の子でしょ? と視線で訴えるが、娘は納得していない。

「だって。5がつ5にちは、こどものひだよ? おととのこもおんなのこもこどもだよ」

 うわ。いつの間にこんなに口達者になったのだろう。男の子ときちんと発音できないのに、幼稚園に行くといろんなことを覚えてくるんだ。

 などと感心してられない。娘はしがみついたまま、じーっと見上げてくる。納得いく返事をもらうまで離さないぞと訴えてるよ、この目。

 えーと。どうして端午の節句をこどもの日って言うようになったんだろう?

 とにかく鯉のぼりは男の子の成長を願うものなんだよね。

「こいのぼりは、男の子が元気に大きくなるようにお願いしているんだから、ちーちゃんには関係ないの。こどもの日は、お休みの名前だから、鯉のぼりとは別なの」

「ちーちゃんもげんきにおーきくなるように、こいのぼりさんにおねがいする」

 うわ、そう来たか。

 ふっと笑いが漏れた。

「……じゃ、小さい鯉のぼりでいい?」

「うんっ」

 娘がにこーっと笑顔でわたしを見上げて「ママ。ありがとっ」と元気に言った。

 手で持てるサイズの鯉のぼり、買いに行こうか。


(了)


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 お題:こいのぼり

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