第10話 西暦ーーーー年 星を継ぐ者

テレビ局のスタジオで、とある番組が収録されている。その名も「緊急特番!こんなにあった宇宙人の証拠!!」という、番組改編期にやりそうな実に胡散臭い番組である。

そこに、場違いな人物が一人いた。考古学者のN氏だ。地球の歴史を調べている彼がなぜこの特番にいるのか?

その答えがこれだ。


「ではN先生は、我々が宇宙人と呼ぶ存在は先住地球人だったとお考えなのですか?」

「そうです。そもそもこの広大な宇宙に知的生命体が地球人だけな訳がないでしょう。しかしそれら異星文明と簡単に接触できるとも思えません。そこに加えて、発掘調査で判明した古代文明の高度さを示す痕跡をみれば、古代生物が宇宙へ移住し、残された生命が知性を持つか監視していたと考えるのが自然です」


スタジオのモニターには様々な古代遺跡が現行人類とはかけ離れた文明のものである数々の証拠が映し出されていた。


「このように、我々の先祖が作ったとは思えない遺跡が複数、同じ年代の地層から見つかっており、この事から過去地球には、我々以外の知的生物がいたと考えられるのです」

「なるほど。ではN先生はその宇宙に旅立っていった古代生物とはどのような生物だったとお考えでしょうか?」

「発掘された化石から推測できるのは彼らは4本の足を持ち、後ろ足だけで直立歩行をして前足二本をかなり器用に使うと考えられています。頭の位置も我々と違い前足の付け根より先にあり、内骨格型の生物だったと思われます」

「なるほど、貴重なご意見ありがとうございました」



テレビを見ていたA氏はその柔らかな腕をリモコンに伸ばして消すと、アホくさ、と呟いて就寝した。


その姿はどこか頭足類の特長を備えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る