これは、民話か神話か。美しい雨の夜、命を求めて駆ける二人の少女の物語。

あなたを好きなこと、今起きていることの理由、どうしても助けたいこと、助けたいのは誰かということ――。

二人の少女が抱えるにはあまりにも大きすぎること。
それを、たった二人で考え抜いた、一夜の物語です。

レビュー文を書かせてもらっていますが、正直なところ、物語を言い換える言葉が到底思いつきません。
凄すぎて。

「白矢の雨」と呼ばれる不思議な雨が降る里と、雨を降らせる不思議な魚と、その沼に咲く美しい野矢芽の花――。
幻想的な夜の景色の中、短文で構成される文章が、死から身を守ろうとする少女二人の一夜の葛藤を、自分の身に起きていることのように鬼気迫るものとして体感させてくれます。

まずは読んでみてください。
きっと冒頭の数行を読めば、沼に足をとられるように、物語の不思議な世界に沈み込んでいくはずです。

その他のおすすめレビュー

円堂 豆子さんの他のおすすめレビュー43