Answer07

■結果説明■


 当たり前かもしれないですが、個性のない、読んで記憶に残らない作品は、評価されにくいでしょう。

 しかしWeb小説を書いておられる方ならご存知でしょうが、昨今の出版業界は変化しています。パッと見では似通った内容としか思えない素人作品が出版され、しかも売れています。


 『個性』という言葉を、どう捉えているでしょう?

 例えば『個性的なファッション』と聞けば、どういう服装を想像するでしょうか?

 パリコレで出てきたり、レディ・ガガが着てるような、独創的というかもう仮装パーティじゃない? と言いたくなる衣装でしょうか?

 しかし日常的に言われる『個性』は、そんなエキセントリックさを差しません。内面であったり、小さなアクセサリーであったり、周囲と同じことを前提にしているのです。

 大学生の方は見覚えありません? みんな同じ服装してません? リクルートスーツだけでなくて、普段着もみんなボーダー柄とかチェック柄とか。

 自分が学生だった頃は、画一的な学生服で個性が……なんてこと言う人がいました。他人の敷いたレールに乗りたくない、たい焼きの型にはまらない人間になろうと、個性を訴える人たちです。

 まぁ、その声の挙げ方も、型にはまってるパターンが多いのですが。


 余談が長くなりそうなので、元に戻しますと。

 過去、小説に求められているのは、前者のエキセントリックさに近い個性でした。その作家にしか出せない世界観や味、そういったものを出版業界は重視しています。

 しかし昨今では、後者のごくわずかな差でも『個性』と呼ぶようになっているのです。


 ここで論じているのは、エキセントリックさ、オンリーワンの方面です。

 要素として大きいほうから順になっています。


 《問01》から《問04》までは、あまり意味のある内容ではありません。作者さんのどういった考え方や作り方で創作活動をされていようと、ご当人の自由です。他人がとやかく言うことではありません。


 ただ注意が必要なのは、【《問02》小説において完全なオリジナル作品を作ることは不可能だと思う】がYES、【《問03》お約束・メタネタは少ない、あるいは、ないと思う】【《問04》どちらかといえばマイナーだと思う】がNOの場合です。

 作品のオリジナリティ、特徴といったものを諦めてしまっている可能性があるからです。

 その確認が【《問05》『ここが他と違う』と胸を張れる要素がある】であり、ここがNOだとするなら、折角作ってしまった作品が埋もれてしまうのは当然のことです。


 さらに、これは余談となりますが、大事なことなので付け加えます。

 もっと悪いことに、別作家の作品を模倣することに、なんの躊躇しない可能性があります。

 星の数ほど作品が存在する以上、完全オリジナルは制作不可能なのは、認めなければならない事実です。

 ですが作家が開き直り、誰かの作品のモノマネに躊躇しなくなれば、終わっていると言っても過言ではありません。

 パクリ・模倣もほう・オマージュ・盗作・パロディ・引用・コピペ。

 言葉の意味としてはほぼ同じと思われるでしょうが、どこまでが許されて、どこまでは許されないか、明確な境界線を作ることができるでしょうか?

 不可能と断言できます。仮に『模倣はNG』だとしても、全体要素90%の模倣と1%の模倣では、全く違います。前者は許されるはずないですが、後者は許される場合がほとんどでしょう。

 これが著作権の難しいところです。境界線を作れると思っている方は、あなただけの自分ルールであり、他人と認識を共有できるものではありません。

 言ってしまえば創作活動そのものが、グレーゾーンなのです。オリジナルを作るつもりでも、結局は先人のなにかを模倣してしまうことになってしまうのです。

 ですが、元ネタが誰も知らない、あるいは絞り切れないとなれば、『オリジナル』として扱われてしまうのです。

 一次創作を行う作家は、それを努力しているわけです。

 なのにモノマネを躊躇しなくなれば?

 堕落するだけです。『流行に乗る』『誰もがやってること』などと言い訳したモノマネでも、ある程度は評価されるわけですから、努力するのが馬鹿らしくなります。

 いずれ創作自体が馬鹿らしくなるか、モノマネが過ぎてバッシングされるでしょう。



 話を本題に戻します。

 ここまでは作品全体についてですが、ここからは小さな要素へのチェック項目となっていきます。

 キャラクターと、その書き方で、埋もれてしまう作品というのは、結構あります。


 【《問06》登場キャラクターを一〇項目以上の箇条書きで説明できる】については、作家さんそれぞれに作品の作り方がありますから、一概に善し悪しは言えません。

 ただHowTo本を開けば、一般的にはキャラクターの詳細決定は推奨されています。


 例えば『ごく普通の日本人、取り立てて特徴のない、なにをとっても普通の男子高校生・山田太郎、17歳』というキャラだとしましょう。


①名前:山田太郎

②年齢:17歳

③職業:学生/高校生

④国籍:日本人

⑤容姿:黒瞳黒髪

⑥平凡な顔立ち

⑦平凡な成績

⑧平凡な運動能力

⑨平凡な家庭に生まれる

⑩一人称は「??」


 必須事項だけでも10項目くらい埋められます。

 ですが薄い書き方をしている作品は、この項目が埋められず『普通』で終わり、しかも作品内で触れることがありません。

 本当の意味で『普通の人』はいない、なんて言いますが、実際その通りです。設定を作ろうと思えばいくらでも作ることができます。

 ですが作者さんの認識が甘く、『作者さんの考え方=普通』で終わってしまっている場合が多いのです。

 『顔立ち:十人並み』+『成績:クラスの中ほど』+『身体能力:平均的』+『両親当人三人家族中流家庭』+『一人称:俺』=『普通』といった具合に、総括的・画一的に捉えているから、結果として特徴のないキャラクターに仕上がる。

 『特徴的なキャラクター』を『美少女』なんて『特徴のないキャラ』してしまう場合も、これと同じ認識不足を行っているのです。

 

 もっと言えば、『普通』ならそれでいいのです。

 ただし徹底的に『普通』を『特徴』にする書き方をしなければ、読者さんの記憶には残らず、評価されることもないでしょう。



 特徴的にするのに一番簡単なのは【《問07》主要キャラクターは、キャッチコピーを持っている。あるいは付けることができる】です。

 特徴らしい特徴がないなら『ザ・普通』で充分なわけです。

 普通から脱しようとしているキャラなのか、普通に固執するキャラなのか、どちらのベクトルかはわかりませんが、これだけで下準備はできています。

 ある日、美少女に告白されたら? 普通の男子高校生はどうする?

 ある日、世界の覇権を巡る戦いに巻き込まれたら? 普通の男子高校生はどうする?

 そうやって突き詰めて展開を進めていけば、充分に活躍できるでしょうし、読者さんの記憶にも残ります。



 ある程度長い話になれば、それを繰り返す必要があります。つまり【《問08》キャラクターのフルネーム・年齢・社会的身分・外見の特徴を、初登場時以外でも書いている】

 薄っぺらい作品の特徴として、話が進んでいくと、名前以外にそのキャラクターを説明できる単語が出てこないのです。

 その場合、読者の側からすれば、『そんなキャラがいた気がする』で止まっています。作者は作品の設定を長期記憶で覚えていますが、読者は数分程度しか持たない短期記憶でしか覚えていないのです。

 クリスというキャラが登場しても、話が進むとフルネーム・年齢・社会的身分・外見の特徴は忘れられています。それどころかクリスという少年なのか、クリスティーンという少女なのか、性別すら覚えていない可能性もあります。

 加えて国とか町の名前まで、カタカナで出してごらんなさい? 区別つきませんよ?

 それを避けるために、話の合間合間に出す必要があるのです


 【《問09》他キャラをあだ名・苗字で呼ぶキャラクターがいる】などはその典型例のひとつです。

 キャラクター同士の掛け合いで『名前の呼び捨て』『名前にさん付け』『名前に様付け』しか行わないキャラばかりでは、忘却阻止にはなりません。

 たとえば『苗字+様付け』をするキャラがいれば、呼ばれるキャラのフルネームが思い出せますし、呼ぶキャラも丁寧な性格である補強ができます。

 たとえば年齢俗称(お兄ちゃん・おじさんなど)で呼ぶキャラがいれば、呼ばれるキャラクターの大体の歳と、年齢差が把握できます。(主要キャラクターの年齢層が固まっていたら意味ありませんが)



【《問10》キャラクターたちは、漢字ならば二文字、ひらがな・カタカナならば三文字ないし四文字の名前】【《問11》カタカナ名前のキャラクターは、ー(長音)、小書き文字(ァィゥェォヵヶッャュョヮ)が使われている場合が多い】は、ただでさえ忘れられやすいのだから、最初から予防策を考えておけという内容です。

 HowTo本などでは『似た名前のキャラクターを出すな』と書いてあるでしょうが、要はそれです。ただ、これが取り沙汰されている場合、音だけのことが多い気がするので、補足です。

 文字を『図』『絵』として見た場合にも差があったほうが、当然区別はしやすくなります。

 音は違っても、みなとかなでが一緒にいたら、区別つきません。山田と山口が同時にいたら、誤字を疑います。なにか設定があってその名前が必要なら、せめてセリフの中だけでも、カタカナかひらがなで表記するべきです。

 サーシャとリーチェが並んでいると、これまた区別がつきません。音としては違いますが、リズムは同じです。図形として見た場合も「サ」と「リ」の作りは似通い、「ー」と「ャ」「ェ」の余白スペースがほぼ同じなので、パッと見たときに混同してしまうのです。

 だから字数そのものを被らないようにする、漢字だけでなくカタカナ・ひらがなでの名前を作る、といった工夫をするほうが読者の記憶に残りやすいのです。

 


 もしかすると、そんな工夫をしなくても、評価されたということがあるかもしれません。

 それが【《問12》作品が『読みやすい』と評価されたことがある】の内容なのですが、全体的、特に《問02》《問03》でNOが多い場合、作品が『読みやすい』のではなく『薄っぺらい』の可能性があります。

 子供の頃に読んだ絵本を、大人になって読むような感覚です。『つまらなく』という評価ではなくても、『懐かしい』『楽しい』というプラス寄り感情を、『面白い』と勘違いしている可能性が高いです。

 原作が面白かったから、二次創作作品も評価できる。仮に一次創作であっても、二次創作に近い評価であるかもしれません。



■改善■


 上記していますが、改善の必要があるのか? という根本部分の疑問が生まれます。

 本当にオンリーワンの個性を大事にするか、ちょっと違えば十分と思うかは、作者さんが許容する個人問題なので、赤の他人がどうこう言うことではありません。


 ただ私見を付け加えさせてもらいますと。

 他と違う、記憶に残る作りにしたら、なにか問題があるのでしょうか?

 誰でもできることと、その人にしかできないこと、どちらがクリエイティビティと言えるでしょう?


 ただでさえ完全オリジナルは作れないのです。

 埋もれることが前提なのです。

 それで作家が埋もれることを前提とするのは、いかがなものでしょう?


 これに否定意見を返す人は、他人の指図を受けたくないか、面倒くさがってるだけです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る