「懐かしい声が聞こえた」で始まり、「恋って偉大だ」で終わる物語 できれば5ツイート(700字)以内

 懐かしい声が聞こえた。

 振り返ると、おばあちゃんがいた。

 いつの間にか仏間の入り口に立っていた。

 にこにこと微笑む姿は、生前と変わらない。

 私は金縛りにあったみたいに何も動けず、何も言葉を発せなかった。

 周囲には私以外誰もいない。みんな寝ていて部屋の中は静まり返っていた。


 おばあちゃんが亡くなったのは、数年前。

「あの人は、わたしがいないと何もできないのよ」

 おじいちゃんを一人残していくことをひどく心配していた。

 駆け落ちという大恋愛の末に結ばれた祖父母だったけど、死によって二人は引き裂かれていた。


 私が見ている前で、突然不思議なことが起きる。

 部屋に発生した白い煙が、おばあちゃんのほうへと向かって行く。

 仏間には祖父の亡骸が安置されていた。

 明日の葬式のために、寝ずの番を私はしている最中だった。


 煙はやがて人の形となり、おばあちゃんは嬉しそうに目を細めた。

 まるで少女のように初々しい笑みを浮かべる。

 二人の目にはお互いの姿しか映らない。

「やっと会えた」

 消えそうなほど、小さい声が聞こえた気がした。

 やがて、何もなかったように二人は消えた。


 死が二人を分かつとも。

 恋の力で二人は再び出会えたんだろう。


 ……恋って偉大だ。

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