第39話 三か月後

陽子の葬儀は本人の希望で密葬となった。

遺骨は朝比奈一族の墓に収められ、月日はまた

たく間に流れて行った。


陽子が亡くなったことにより、又吉が紗季の家

を訪れる理由が無くなったが、又吉は相変わら

ず紗季の家を訪れた。


やはり心配だ。

朝比奈一族はとうとう沙希だけになってしまっ

た。

又吉には、陽子が何故自分の癌を紗季に伝えな

かったのかわかるようで、わからなかった。


想像はつく。

しかし、果たしてそんな事を死を前にしてと、

と言う気もあった。

それ以上に、やはり紗季の事が気になった。


紗季がもしかしたら・・という気が皆無ではない。

紗季を知り、紗季の強さを肌で感じた又吉だった

が、だからと言って絶対とは言い切れなかった。


紗季にもしもの事があったら。

その心配は四六時中又吉の頭から離れなかった。

気づけば一日に一回は紗季の家を訪れていた。


紗季も又吉の訪問を笑顔で迎えてくれた。

一人で食べる夕食は味気ないと、むしろ沙希の

方から来てほしいと誘ってきた。


夕食の席で紗季が


「私が自殺するとでも思ってるんじゃないの」


と紗季が言った時はさすがに又吉も驚いた。


「紗季ちゃんはそんな弱い子じゃないよ」


笑ってごまかしたが心配なのは確かだ。


「姉がね、何故私に癌の事打ち明けなかったと

 思う」


夕食の席でこの会話が平然とできるようになっ

たのは、陽子が亡くなって三ヶ月も過ぎた頃だ

った。

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