第21話 陽子のイタヅラ?

妹の紗季に何も言わず、大学の講師を突然辞め、

どこかへ一人フラり旅。

陽子の性格からしたら考えられない行動だが紗

季は有り得ると言う。


 昔から、紗季に対してはこうだった。

平凡な日々が続き、ああこのまま日々が優しく

流れて行くのだろうな、と紗季が思った頃、そ

れを陽子がぶち壊す。


 陽子が言うには冗談だと言うサプライズがち

っとも冗談にはならない。

 紗季に誕生日のプレゼントにと贈った人形を

紗季が大事にし、愛着が湧いたころ、突然丸焼

けにした事がある。

 驚く紗季を見てケラケラ笑い、ごめんごめん

と謝ってくる。

冗談では済まないと本気で怒る紗季に、あれは

別の人形、これが本物と、別の所から紗季の人形

を取り出すのだが、同じ人形を沙希の前で焼いた

事には間違いはない。

 それを冗談で済ます陽子の心情を紗季には理解

出来なかったが、幼い頃から陽子には、そんな性

癖があったという。


紗季はさらに言う。

自分がこんな内向的な性格になったのは、陽子

の突然の(意地悪)に似たサプライズが大きい

と。

 だから今回の事も、ありえない話ではないと。


又吉には俄かにには信じられない話だった。

 普段の陽子は、陽気で、周りにも気を使い、優

しく、それでいて芯の強い女性だと思われていた。

紗季が言うような行動を、又吉は見たことが無かった。


 どちらにしても、陽子が無事であることはわかった。

無事であるならば、もう心配する必要も無い。

紗季は憮然としていたが、とにかく無事ならばそれ

で良かった良かったと、又吉達は部屋に戻ったが、そ

こに二組の布団がピタリ隙間なく敷かれているのを見

た時、二人は思わず入り口で立ち止まってしまった。


 つまり、そういうことだ。


陽子の失踪を解明するつもりでここまで来たのだが

解明する前に、陽子から回答が来てしまった。

じゃあ、二人は何を話せばいいというのか。

あの布団の中で・・・・。

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