心が痛い一人称、衝撃のその先に待っていたのは…

読み終えて心が痛い。一人称で語られる三者三様の一方的な思いで展開する世界は、高校生特有の閉塞感と焦れったさと相俟って息苦しい。

作者の作品はどれも完成度が高く群を抜いており、この作品もまた例外ではない。どの文章も、一見さっと読めるようでいて緻密で深い。どの一文もその場に必要とされ、過不足なく読者を場面に誘っていく。
一人称による心情描写が見事で、よくまあここまでJKの女心が分かるものだと感嘆至極、何度も胸を突く。この描写力は天性なのか努力の賜物なのか、いずれにせよ溜息しか出ない。

衝撃の場面は、最初は何が起きたのか分からなかった。それは読む側の自分が、まさかの展開に動揺の余り、前後関係が読み取れなくなったからだろう。それくらい、意外なものだった。
そして同時に思ったのは、この結末を最初から狙って書かれたとしても、もしここを全く逆の展開にしたら、この話はどうなっていたのか、である。久保田氏は「作品の感想は読者に委ねられる」と近況ノートでも語っておられるので、甚だ勝手ながらそれをお許し頂きたいと思う。そうすることでしか、いまは沸き上がる悲しみを宥る術をもたない。

恋愛・ラブコメジャンルになっているが、恋愛・悲劇ジャンルをこの作品の為に創設して欲しいと思った。もしそうなったら臆病な私は最初から読みに訪れなかった可能性はあるが、少なくとも今は久保田氏の書かれるものは片っ端から読みたい「久保田病」に掛かっており、作品の魅力を正確に提示することで、より読者を呼びこむことができるよう願う。

最後に、「久保田病」は、私の場合は読破の度に自作原稿を破り捨てたくなる&連載辞めたくなる病も同時に発症するのは勘弁して欲しい! と毎度叫んでいる。ほんとに、参ります。
なので、書き手さんは推敲&投稿完了後に読まれるのがおススメです。

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