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「さっきから気になってたんだけど……」

「うん」

 果たしてこれを聞いてしまっていいのか――美沙は自問していた。

 ただそんなことは、ずっとこの店を一緒に切り盛りしてきた由希には容易にわかった。

「美沙ちゃんのお察しの通りだよ。あの冬、私達家族は空気が綺麗な田舎に引っ越した。お姉ちゃんは村の診療所にほどなくして入院したの。そして――

 その年の夏、お姉ちゃんは旅立ちました」


 由希はいすから立ち上がると、またコーヒーを人数分淹れた。その間、誰も言葉を発しなかった。

「不思議だよね。あれだけ大人っぽいお姉ちゃんだったのに。私は全然子供だったのに。もうとうにお姉ちゃんの年を追い越しちゃった」

 由希は改めて自分に問う。あのときのお姉ちゃんみたいな優しくて強い人に自分はなれていますか、と。

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