リビングデッドは愛する人の夢を見るか?

死とは常に、傍に寄り添う影のようなものだ。
ぴったりと背後にいて見えないときもあれば、自分の進む先で長く長く伸びて道のような姿をとることもある。
死は命の終着地点であると同時に、自分が進む道なき道の一生において、灯台のように指針となりうるものなのかもしれない。

パニックホラーとエンタテインメントの融合として、1968年のロメロ映画作品以来、ゾンビものは脈々と進化を続けてきたジャンルの一つである。
そこには死と生の間で揺れる人々のドラマがいくつも生まれ、多くの観客を恐怖させ、感動させ、魅了してきた。
幽霊や悪霊によるホラーとは全く異なる、生ける屍“リビングデッド”を相手にするがゆえに生まれる苦悩を見事に描ききった作品は、今日でも名作として支持を受けている。

さて。この作品はゾンビものとしては異色の設定を持ちながらも、前述したゾンビものとしてのエンタテインメント性を損なうことなく、むしろ新しい可能性を提示しながら展開していく。
年老いた人々を物語の中心に据えるという、一見すれば華も何もない設定は、こと生死のドラマにおいては納得のリアリティを与えるスパイスとして機能している。

見事、と言わざるをえない。

“送り人”と呼ばれる職人の存在も物語に深みを与えており、読んでいる最中のハラハラもさることながら、読後に“命”について考えさせる役割も果たしている辺り、本当に素晴らしい。
ゾンビもののニュージェネレーション、として紹介することに何の躊躇いもない一本。ぜひ、ご一読あれ。

その他のおすすめレビュー

山羊さんの他のおすすめレビュー41