引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。

@jeanmaru

第1話

2004年1月20日の出来事だ。と、その前に。僕は、伊勢谷信二。ニートだ。


 そんな僕だが、その日を境に、ニートではなくなってしまった。これは、そんな引きこもりで、何のとりえもない僕が、数々の経験をして、成長していく話だ。と、言っておくと、後々どんなチートしてもいい感じに聞こえるから、そうしておこう。


「ふひひwww『今期のアニメについて評価してこうぜwww』っと……スレ建て完了!」と、言う感じに、ネットの掲示板を立て、それでお金を稼ぐ。そうした生活をずっと送れると僕は思っていた……が、実際世の中そこまで甘くない。

 慎二いいい!!あんたいい加減働きなさい!!

と、親に突然切れられたのだ。と、まあ、こんな感じで今。仕事を探している最中だ。


 しかし、長年ニートだった僕に合う仕事などあるわけもなく、僕の履歴書には、京大出身。それだけが目立つようになった。しかし、今の世の中、学歴だけじゃどうもこうも採用しにくい時代になっているようで。やはり、長年のニート生活が身についてか、『ござる』や『アイエエエ!?』とか、ネットスラングが離れなくなってしまっている。そりゃ、面接でこんなこと言ったら気持ち悪くて採用してもらえないだろうよ。だって、自分でもキモイと感じるのだから。


「あのババア……帰ったら絶対にぶん殴る!!」


 そんな独り言をつぶやいたが、確実に自分が悪いことにかわりはない。だが、僕とて進んでニートになったわけでもないんだ。友達に進められたアニメにはまる。それだけの行動が、僕に3次元への絶望、引きこもりの快楽を与えてしまったのだから。まあ、その進めてきた奴は、研究とアニメの大好きなちょっとやばい奴だ。なんか、博士とか呼ばれてるとか。僕は絶対に呼ばないけど。


 と、自己紹介しているうちに、声を掛けられたのだった。声をかけてきたのは、女の人だった。その要旨は、なんかの表紙で間違えて、僕に話しかけてきたのでは? と、思わせるほどの美形だった。いや、あんた絶対間違えて僕に話しかけてるだろ。

「あの~……すいません。ちょっといいですか?」と、僕に話しかけてきた物だから、周りの人も少し驚いている様子がうかがえる。いったい僕が何をしたって言うんだ。こういうの、公開処刑って言うんだろ?


 だが、次に彼女が僕に言ってきたのはとても今の僕には都合のいい話だった。いや、狙ってきているんじゃないか? と、言うほどにタイミングが良すぎる話が彼女から舞い込んできた。「もしかして、仕事。探してます?」と、彼女は僕に言ってきたのだ。仕事は、探している。彼女に話しかけられて僕は、「はい! 仕事を探してます!」と、まるで遠足にはしゃぐ小学生のような笑顔で答えてしまった。


 が、当然。誰も彼女との出会いが僕を変えるきっかけになるとはだれが想像できただろうか? 彼女に話しかけられた瞬間、世界は僕を助けてくれた。というのは大げさだろう。だから、あくまで何かの拍子で、僕を誰かと勘違いして話しかけてきた。そう思う事にした。

「なら、内職はどうですか?」

「内職……?」

「はい! 楽してお金を稼げる一石二鳥のたまものですよ!」

 内職とは。その疑問に答える暇を与えず、彼女は勢いだけで僕にぐいぐい仕事を進めてくる。ちょっと落ち着いてください。そういうと、彼女は落ちつ―――かなかった。僕の言葉を無視して、彼女の仕事の勧誘はエスカレートしていく。まるで、ジャ○ネ○タカ○のような勢いで。だ。え? 隠しきってない? んなもんは知らない。興味ない。

 彼女の勢いがよすぎて、僕もついつい興味がわいてしまい「その話……詳しく聞かせてくれませんか?」などとドヤ顔で言ってしまった。おそらく、鏡を見たら、いくら自分でもキモイと反応するような顔をしているだろう。……、ドヤ顔自重します。

 そうこうしているうちに、彼女の話は、仕事内容の話に入っていた。正直、あまり話が耳に入っていなかったからか、彼女の言う仕事内容に度肝を抜かれた。

「はい! ずばり! 魔王を倒してください!」

 彼女の言葉は、「ちょっと何言ってるかわからないです」と、突っ込みを入れて欲しいかのような勢いで次元を超えた。彼女の頭はブラックホールか何かだろうか? しかし、そうはいっても、長年ニート暮らしだった僕にとって魔王は反応しないわけのない言葉だった。だって、某有名RPGは全種類プレイ時間がカンストするくらいやり込んだし。プレイ時間カンストとかお前廃人すぎだろwwwと、書き込んだスレで言われたこともある。仕方ないだろう。それしかやることがなかったのだから。

 しかし、魔王なんて冗談だろう。半信半疑だった僕は再び彼女に今言った言葉をもう一度、と頼んだ。

「も、もう一度言ってください……」

「いいですよ! ずばり! 魔王を倒してください!!」

「な、なんですとおおおおおおおおおお!?!?!?!?」

 と、まあ。こんな会話になったわけだが。うん。我ながら、色々自重するべきかもしれない。というか、もう魔王とかどうでもいい。その仕事でいいよ。その仕事でも何でもいいから、あのババアを見返せればいいよ。

 そう言って、ひき受けてしまったのが運のつき―――

 僕はこの日、内職(ありえ『無』い『職』業)につくことになった。それが、のちの運命を左右するとも知らないで―――

 内職。それは、ありえ無い職業の略らしい。

謎だ。なぜその略し方になったのか。謎だ。というか、そんなん仕事にできるんですかね?

「え、えっと……」

「あ、自己紹介がまだでしたね」

 やっと本題に……

「私は、勇者育成協会の花沢と申します。」

「ゆ、勇者育成協会……?」

 なんだそれ。わけわからんぞ? あからさまに胡散臭い……ちょっと、様子うかがってみましょ、そうしましょ。

「あなたは、魔王を知っていますか?」

「魔王……?」

 この人すごい、ぐいぐい来る。まさか……コミュ障……? 違うな、中二病……も交じってるのかな? 顔はいいけど、すごい残念だよ。なんでそれでクロカミロングストレートッで容姿もベリグットなのかわかんないよ。

「魔王は、この世の苦労……そうですね。ブラック企業を生み出しているんです。」

「それって……」

 ブラック企業=社長=魔王って事ですか。そうですか……いや、まあ、確かにね? そりゃあ、魔王ってのは納得だよ? でもさぁ……

「で、その魔王を撲滅させる組織が、私たち。魔王撲滅教会です!」

 笑顔で言ってるけどさっきと言ってることが違うんですが!? 魔王撲滅教会!?

さっき勇者育成協会って言ったよね!? 僕の聞き間違いかな? いや、うん。さっき確かに勇者育成協会って――それに。それにだ。一番疑問な点を口に出す。

「そ、それ……僕じゃなきゃダメなの……?」

「さっき、『あのババア、帰ったらぶん殴ってやる!』って意気込んでましたよね?」

 そこかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!? そこ基準で選んだのかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!! もっと違う基準あるだろうがあああああああああああ

「あなたの言ってるそのババアも魔王ですよね?」

 違う、魔王じゃない、決してそんなチャチなもんじゃねえ!!! ブラック企業よりも明らかにブラックだ。毎日毎日、僕に暇はねえ。あるのは借金と、親からの就職しろ!! という怒鳴り声だ。

「そんな野蛮なこと、勇者の素質のあるニートしかできませんから」

 と、彼女は笑顔で言った。いや、おかしいです。ニートが何でも悪いって基準はどう考えてもおかしいです。本当にありがとうございました。

 というか、ニートは非力です。お菓子の食べ過ぎで非力です。まともにトレーニングなんてしねえから!!

「あ、あなた今、どこから突っ込めば言いかわかんねえって顔してました?」

「い、いや? し、してませんよ?」

 この人……怖いよ。読唇術? 読心術? まあ、後者だろうな。って、そうじゃねえ!! この人、エスパーかよ!?

「大丈夫ですよ。魔王を倒す時は、私も一緒に行きますから!」

 そこが問題じゃないです。他にもっと色々問題あります。なんでそこだけ切り取った……確かにわかりやすいのは大事だ。でもな、大雑把すぎんのも駄目なんだよ。これ、仕事の基本な。(ふつうは大雑把でも大体わかると思うが)

 てか、この人居ないほうが絶対仕事はかどるよね? そうだよね? 入るとは言わないけど。入るとは言ってないからな!!

「えっと……花沢さん……でしたっけ?」

「はい。なんですか?」

「えっとですね……僕、その勧誘、断っていいですか……?」

「駄目です」

 ナンデエエエエエエエエ!? 逃げ道ください! お願いします!! こんな胡散臭いとこ嫌です!!

「どうする……どうする、俺……!」

「あ、あなた独り言だと一人称変わるんですね」

 そこじゃない! 今突っ込むの明らかにそこじゃないよ!? でも、僕も突っ込みを入れてる場合じゃない!! やることがある!!

「……逃げろ! 俺!」

「あ、待ってください!」

 ふっ……50m走を19秒の俺をなめるなよっ……! え? 遅い? 今はそんなことより逃げるのが先だ。あの人、怖い。顔芸を気にしていないのだろうが、とても女がするような顔じゃねえし、あれ。やばすぎだろ。なんだよ、あれ。

「待ってくださいって……言ってるじゃないですか!!!」

 !? 忍法!? あれ忍法!? 50m走を全力疾走する俺氏……忍法にびっくりしたけど、それでも逃げるっ……!! なんか、彼女がよくわからんけど猿飛直伝で幼馴染すら凌駕する忍法って言ってるけども、逃げる!!

 が、うかつだった。足元に不注意だったせいで――

「あっ……」

 そっと下を見ながら、僕は「あっ」と言ってしまった。

 石!! 空気読めよ!

 僕はそのまま、首から一回転した。

「あ、これ俺氏人生終了だな」と、理解を得るのに時間はかからなかった。

「お母さん!! ごめんなさい!! 生意気でごめんなさい!!! 仕事見つけず家に引きこもっててごめんなさいいいいいいいいい!!」


 その時だ。謎の光が僕を包んだ。

 その時に、【まだ、君とは釣り合わないようだ】そう言われ、意識が飛ぶ。確かに、意識が飛んで、僕はその場で倒れ込んだ――


 そのあと、僕が目を覚ました途端看病していたためか、目の前に居た彼女は笑顔で、「あなたに死なれては仕事ができません!!」と、言われた。

 しかし、僕は察してしまった。これはもう、勇者になる以外助かる手はない……と……

「あ、勇者になってくれるんですね」

「さっきから突っ込みたかったんですけど! 人の心勝手に覗かないでください!」

 お母さん。俺、今日から職に就きます。

 仕事内容? 聞かないでください。

 そして、この日。引きこもり歴5年の僕は、内職についた。

 内職と言っても、これから悪夢が始まるんだろうなぁ……よし、気を取り直して、頑張ろう!!

――

さて、どこから話そうか。僕は、昨日突然勇者になった。

理由なんてちっぽけなものさ。(と、言うか、聞かないでください。そうしてください。お願いします!!)

「あ、また独り言ですか?」

「あー……はい。そうです」

 このくだりはもう飽きた。

 このくだりを、もう軽く50回は繰り返している。

 というか、この人躊躇いもなく人の心読んでくるんですが。

 なんで躊躇いもないんですか。例えば、この人の水着姿とか想像……こ、これはあくまで例え! 本当はそんなこと思ってない! (まあ、多少は想像したけど……)

「無限ループって奴か」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「デジャヴ」

「あ、そろそろ飽きました?」

 わかってたのかよ!! なら最初からそうしてくれよ!!

 もしかして、極度の構ってちゃんか……? なあ、そうだといってくれ。まあ、そうだとしてもそうじゃなくても僕には関係な……関係なっ……

「あ、その顔は……」

「そのくだりも飽きた」

「え……う、うう」

 えっ? 泣く? そこで泣く!? 僕悪者みたいになってるけど、まったくそんなことないからね……無いんだからねっ!

「ご、ごめ……」

「あ、謝ってくれるんですね」

 この女……殴りたい!! 絶対殴ってやる!! マジでマゾなんじゃねえの?やばすぎんだろ……

「殴られる……!///」

 何赤くなってるんですか!?!? Mですか!? マゾなんですか!? やべえ、こいつ速く何とかしないと。とかいう僕の変な妄想にくぎを打つように、彼女は断言した。力強く、蟹股になりそうな顔で断言した。

「あ、私はSですよ?」

 嘘だ!? 絶対嘘だ!? 僕にはMに見える……みえるぞっ……!! そんな僕の脳内会議(一人で行っているから会議ではない)を読み取ったのか、彼女はドヤ顔で言ってくる。ためらいもなく。

「信じられませんか? じゃあ、一回殴らせてください」

 何故その発想に至ったんですかね? ちょっと、理解できないですね。どSと信用させるために殴るのはよくないです。NO。暴力NG。

「ところで……何故敬語なのです?」

「敬語に敬語は……」

「あ、じゃあタメでいいんですね?」

 あの、いったい仕事はいつ始まるんですか……? 僕は忘れかけてたことを思い出した。いや、これ忘れてちゃいけないけど。

「あ、忘れてました。これから仕事に向かいましょう!」

 やっとか。溜息をつき、彼女に呆れた顔をして僕はそう心で言った。まあ、これも彼女によまれるんだけどな。

「じゃあ……早速ですが、これ。着てください」

「え……? これは……?」

 白い作業着だ。どういう……? しかも、なんか顔面を覆い隠すような縦長のフード(?)まである。読めない。仕事なのに全く読めない。

 おまけに、何かスプレーを渡された。慌ててラベルを探したが、ラべルは白く、無地で統一されている。あ、統一されているって言うのは、複数渡されたからだ。

「まずは、害虫駆除からです!」

「はい……?」

「だから。まずは害虫駆除からです」

「害虫って……」

「あれです!」

 彼女が笑顔を向けながら煽る。仕方なく僕はその指の方へ顔を向けた。が、そこにあったのは目を見張るほどの光景だった。それは、害虫でも何でもない――

「ただのおっさんじゃねえか!!!!」

「嫌ですね。あれは害虫です!」

 どこがじゃ! どこからどう見ても人間ですよ!? おかしすぎるだろ、この仕事。どこをどう見てそうなるんだよ。馬鹿じゃねえの?

「あ、私忘れてましたね。これ、付けてください」

 差し出された青いサングラス。怪しい。怪しすぎるぞ。とりあえず、掛けよう。これを掛けたとき、何かの間違いじゃないのか? というレベルの問題発言を、彼女はした。確かにした。それは、渡す前にいうことのはずだ。

「あ、このサングラス、手順間違えて装着すると、目が焼けこげます」

「え?」

 ぼん。

 爆発音とともに、僕は彼女に対する怒りを覚えた。まあ、正確には初めてではないのだが。彼女、天然さんかな? そう思っても、この怒りは収まらない。むしろ、そんなこと考えると余計に腹が立ってきた。

「それ先に言ってくださいよ!?」

「煽りは基本じゃないですか?」

 どこの常識ですか。それ。日本の基本じゃないことは確か。なはず――!!

「フランスです。嘘です。てへぺろ」

「どうしてこうなった」

 彼女のテンションについていくのが僕の仕事ですか?

 と、疑問に思うほど、彼女は自由だった。こんな自由でよくクビにならないな……彼女は。

「私の仕事は、あなたに迷惑をかけることです!」

「よそでやれ!」

 ふっ。決まった。今の突っ込み、なかなかのものがあるぞ。自分の中でも、新しい改革的な何かを感じた。そのレベルの突っ込みもおかしいが。

「ドヤ顔が気持ち悪いです。吐きそう……」

 この女、実に最低である。思ったことはすぐに言う。そんな素直なのはいいことですが、僕にはとてもストレスです。

「私は、思っていることは絶対に口に出す主義です」

 知ってた。そんな顔で彼女を見つめるが、彼女はドヤ顔でそう僕に訴えた。正直、もう突っ込みがつかれた。

「疲れないでください!? あなたから突っ込みをとったらキモイしか残りませんよ!?」

「あの……一発殴らせろください」

「え? 出来るんですか?」

 うざい。この女、うざい。煽ってくる。それも、すごい。やばい、マジで殴りたい。

「それより……今は害虫駆除の話でしょ!」

「あ、それもそうですね。」

 仕事後回し! この人、仕事後回し!! 怒りを堪えて言ったらこれだよ! 彼女、本当にこの仕事できてるのか……?

「さて、じゃあ説明しますね」

「は、はい」

「あのおじさんを、このナイフでグサッ。それだけです!」

「君は僕を殺人気にするつもりかい!?」

 笑顔で言うことじゃない。この子……怖い。というか、この仕事が怖い。とんでもない仕事を僕は引き受けてしまった。そう思った……

「だって、それが仕事ですもん。仕方ないです」

 笑顔で言われると、だんだん彼女の言うことが本当に聞こえてくる。罪悪感は残るが、仕事も大事だ。何しろ、初めての仕事を放棄するわけにはいかないしな……

「さあ、仕事を始めましょう」

「あ、は、はい」

 やめろ! 疼く! 右手があいつを倒せと疼いている!!

「痛いですねぇ……」

「痛いですねぇ……」

 !? 増えた!? 増えちゃった!?

「あ、びっくりしました? それが狙いだったんですが」

 この幼女はいったいどなたですか? あ、僕の妹だった。

「キモイんで口、開かないでください」

 怖いよおおお。この幼女怖いよおお。多分、口を開いたら殺されるんだろうけど……でも、それも悪くはないかな。

「あなた……ロリコンだったのね……!」

「急に馴れ馴れしいなww何があったしww」

 僕はキモイ程ににやけながらそう言った。でも、そう言った瞬間、彼女の顔は一気に覚めた。僕を明らかに軽蔑する眼で言った。

「あ、ごめんなさい。死んでください」

 ツン! デレがないけどツン!

 何言ってるんだろう。俺。

「とにかく! 彼女は私の妹で、害虫駆除のエリートです!」

「え? 花沢さん、今いくつ?」

「幼女に興奮する輩に教えるわけないじゃないですか」

 ですよねー。ん? 妹って事は幼女じゃ無くね? 幼女じゃない幼女……それもグッドだな。

「幼女じゃないですよ?」

 なんだろう。話が脱線している気がする。仕事の話に戻さねば。と、僕は少し寂しそうな顔で言った。

「あれ? 私たち、何を話してたんでしたっけ?」

「さあ……? じゃあ、お姉ちゃん。害虫駆除はあの変態に任せて早く行こう」

 変態。と、強調されたのであった……しかも、笑顔で。あんな笑顔で言われるのは、僕たちの業界ではご褒美だけどな!

「僕に人を殺せというのかっ!?」

「じゃあ、よろしくお願いしますよ~」

 オワタ。確実にオワタ。

 これじゃまるでテロリストじゃないか!

「あれ? 魔王倒すなら最初からテロリストじゃね?」

と、自分で勝手に納得した。そうだな。どうせ魔王はやるんだ。一人殺したところで罪にはならない。というか、罪になればこんな仕事初めから無い。

「後であの二人、確実にぶん殴る」

 と、言った瞬間、見たくもないトラウマのような走馬灯が見えたので、やめておくことにした。

「君、何ぶつぶつ言っているんだい? 痛々しくて見て居られないよ」

 ターゲットが自分から近付いてきた。

 これで勝てる!

と、言うのは負けフラグなので、心の中に留めておく事にしておいた。

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