紫「宵にわたりて」

わたしが選んだ鏡台を

あなたはとても気に入ってくれました

あなたのかわいらしい顔

見えています


朝もやが広まる我が家の庭で

待ちきれずに咲いた梅の花を眺めて

ため息をこぼす

あなた

狂いそうです

もう

待たなくて、よいのです


わたしが好きだった歌を

あなたは何度も歌ってくれました

あなたのすがるような声

聞こえています


宵やみが広まる我が家の庭で

待ちきれずに供えた菊の花を見つめて

涙をこぼす

あなた

安心しました

そう

待たなくて、よいのです


ずっと


ずっと


待っていてくれたのに

帰れなくてごめんなさい


それではお先に川をわたろうと思います


また、来世で、一緒に────────。




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