シェアハウス

 東京ならではといった方法の一つだ。

 筆者の場合は上京後、数社のシェアハウスを内覧・利用させて貰った。




□シェアハウスとは

 都内に増えつつある新しい居住の形。とは言うものの、要するに若い者には金がねえんだよ糞がああああ!という時代の流れに反映されたってただそれだけの現状。数名〜数十名がキッチンや水回りを共用する代わりに、家賃が相場よりも安く抑えられる利点もある。




□シェアハウスのメリット


・安い初期費用&更新費用

 やはり安い敷金礼金(保証金)と、一式が揃った生活環境だろう。キャンペーン中の物件であれば0円から入居も出来る。ただし余りに初期費用が安い物件は、それだけ問題のある人物も混じり易いので注意も要る(基本は数万の保証金ぐらいは取っている物件のほうが安心は出来る)


・揃った設備

 都内で一人暮らしを考えた場合、どうしたって洗濯機・冷蔵庫・炊飯器といった必需品の呪縛から逃れられない。しかしそれらが共用部に一式揃っているシェアハウスは、その時点で買うべき家電の数を減らしてくれる。また経年の劣化や、引っ越しの際の邪魔にもならず非常に便利である。


・定期的に入る清掃

 大概のシェアハウスでは、業者による共用部の清掃が定期的に行われる。一人暮らしの折、水回りの掃除は非常に手間で、悩んだ方も多いのではないだろうか。キッチン・トイレ・バス・洗面台に廊下と業者が綺麗にしてくれる為、自分の部屋だけを清潔に保てば良いというのは効率面でも非常に有り難い。


・便利な立地

 通常の格安物件に比べ、立地が良いケースが多いのもシェアハウスの特徴だ。職場まで何度も乗り継ぎする代わりに安い、という物件を選ぶのも有りではあろうが、交通費や通勤までの時間や金を創作に充てたいと考えはしないだろうか。たとえ少々割高であったとしても、利便の都合で都心のハウスなる選択肢は、恐らくは間違っては居ないと思う。


・いつでも立ち退ける

 元手がかかっておらず、重い家電も買い揃えていない訳だから、転機がくればすぐに引き払う事が出来る。夢を諦める、チャンスが訪れる、そんな時に躊躇が要らないのもシェアハウスの利点の一つだ。





□シェアハウスのデメリット

 

・人間関係

 これは通常の賃貸でも変わりがないが、ひとつ屋根の下で過ごす都合上、シェアハウスの場合は特に顕著だ。例えば筆者が最初に入った葛飾のシェアハウスでは、シャワーが二部屋しか無い上にその中で外国人が「大」を催すなど、完全に私的な国際感情まで悪化する惨状が立て続いた(水が溜まってるな。髪かな? → うんこをしないで下さいと張り紙が → うわああ)


 というのは論外としても、例えばアニメに理解が無い人からすればスク水ですら人格批判の対象となりうるし、ディズニーと宮崎アニメしか語彙の無い人と話すのは苦痛の極みと言って良いだろう。


 さらにはマルチや宗教、ドラッグ予備軍にヤリチン&ビッチと、下層と富裕への渇望の狭間でゴミの様にうごめく亡者たちが跋扈しうる点も充分に把握しておくべきだ。事実筆者の居たシェアハウスでも入居者同士のセックスの末退去処分を受け、その後諸事情あってタイーホなんて猛者も、ケースこそ違えどあるにはあった。




・体面

 節約に次ぐ節約が出来るかと思いきや、実際には外に向けた体面に金が飛ぶ。具体的には旅行へ行けば土産、パーティがあれば差し入れといった、付き合い的なそれ。いつも貰ってばかりでは社会人としての沽券に関わるから、結局は自分も何かをお返ししなければならないという訳だ。逆に言えば、これさえやっておけば多少は付き合いが希薄でも後ろ指をさされることはない。




・余り羽目を外せない。交友関係もオープンに

 一人暮らしなら出来るぐうたらも、周囲の目がある以上そうそう出来ない。友人を呼ぶにもシェアハウスのFacebookページに一言必要だし、同性はともかく異性の宿泊は原則禁止がほとんどだ。当然だが、風紀を乱す性交渉もハウス内では現金。外でホテルを探す羽目になる。




□ではどこでシェアハウスを探すか

 おしゃれ度を重視するなら「ひつじ不動産」が良いだろう。一般の賃貸並の家賃で、格安シェアハウスより一段上の、外装やコンセプトに凝ったハウスを紹介している。帰宅時に人と顔を合わせたく無い人は、各部屋がブロック上に分かれていて、リビングが最上階にあるハウスを探すと良い。そういうハウスは人数が多くとも、リビング以外ですれ違う確率は通常のマンションとさして変わらなくなるからだ。




□内覧と審査

 回転率を重視する人数が多めのシェアハウスは、毎月の家賃が確実に振り込まれると推認されればすぐに認めてくれる(勤務先を記入する際、正社員と述べておく事)一方、少人数で長期に渡り住人が住む拘りある物件では、応募者の人柄や仕事の内容にまで突っ込んで見てくる場合がある。つまり内覧=面接と考えてもらって良い。なので内覧とは言えそれなりの服装で、社交的且つ明るく振る舞っていくべきだろう。




□総括

 東京は家賃が高いから地方で。そんな考えの方もいるかも知れない。だが実際に田舎で暮らした経験のある筆者としては、実家にでも住まない限りは田舎は田舎で高くつくというのが結論だった。周囲との付き合い、スーパーまでの車での買い出し、車自体の維持費、持ち家でない限りかかり続ける家賃。それらを加味すると、全てを捨て都内のシェアハウスで暮らす方が、イベントに出るという意味合いでは理にかなっているのでは無いかと思っている。


 学生時代は全てを切り詰める事こそが創作への近道と考えていたが、日常の潤いや手にできる情報の多さも武器になるというふうにここ数年でシフトしている。せっかく都会に来たのであれば、一度こういうライフスタイルも満喫してみるのも良いのではないだろうか。筆者も肌に合うとは思わないが、取りうる選択肢の中ではベターなものだったと現時点では考えている。

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