第17話 追跡


 翔太が運転する車は、管理公社に気取られることなく、地下駐車場のシャッターが開くと同時に何事もなく外へ出て、そのまま首都高速道路に入る。現在は、丸の内に向かって首都高速5号池袋線を走行中である。池袋から丸の内までは精々十数分の距離であり、別ルートを取ったとしても二十分三十分あれば余裕で到着してしまうので、夕方のうちに到着することは難しいことではなかった。


 そんなこんなもあり、翔太はこれといってスピードを出すことなく、悠然とドライブをしていた。助手席に座る絵真もとくに急かすようなことはせず、ただジッと流れゆく東京の街並みを眺めていた。


 屹立するビルとビルの合間を道なりに進んでいくと、5号池袋線は首都高速都心環状線に合流する。都心環状線に入ると、立ちはだかるような高層ビル群が視界に入る。丸の内エリアの居住区は東京駅の建物を中心としたビル群なので、今見えているビルの向こう側が丸の内エリアの居住区となる。都心環状線をもう少し進めば首都高速八重洲線に入る分岐があり、そこに入ってしまえば、もう到着したも同然であった。


 しかし翔太が異変を察知したのは、その分岐に差し掛かったときであった。丁度分岐に向けてハンドル操作したところであった。


 ――八重洲線が、塞がっている!?


 八重洲線に入る道には管理公社の車両が停車しており、更にはバリケードも設置されていて道を封鎖していた。いかなる理由で道を封鎖しているのかはわからないが、それを行っている存在は、丸の内エリアの管理公社警備部であることは確かであった。


 翔太はその光景に眉をひそめて逡巡したが、考えたところで状況が変化するとも思えなかったので、やむを得ずそのまま都心環状線を進むことにした。東京駅周辺は八重洲以外にも出口はあるので、そちらから一般道に出て丸の内エリアに向かう算段をつける。


「翔太、後ろ」


 不意に隣から声がして、翔太は前を向きながら横目で絵真を見る。それまで景色を眺めていた絵真は、今はサイドミラーを注視している。そこに映る存在を見て、翔太も運転席側のサイドミラーを見やる。するとそこには追跡する管理公社の車がはっきりと映っていた。


「さっきの車か」


 その車体を見て、先程の分岐にて道を封鎖していた車両であることを認識する。どうやら翔太たちが通過したのを見計らって車を動かしたらしい。


「俺たちを追っているみたいだな」


 バックミラーに視線を向けると、追跡している車は二台であることが窺える。翔太は試しにスピードを上げてみると、後続の車もそれに合わせるかのようにスピードを上げた。これにより、彼らの目的が自分たちであることを翔太は理解する。


「で、でも、どうしてここまで大事に」


 絵真は怯えた表情をしながら後ろを見て呟く。管理公社に追われる理由はあることにはあるが、果たしてその理由だけでここまでするとは到底思えなかった。


 確かに翔太たちは、遺失物を捜索している管理公社を結果的に妨害している。しかしながら遺失物とはいえ、正当に購入したものであるので、正規の手順を踏んで返却を言い渡せばそれで十分であるはず。それに購入者と話をするとしても、自宅や宿泊先を訪れればいいのであって、こうして追跡する必要はないのである。


 ――つまり絵真の買ったSDカードは、ただのSDカードではないということなのか。


 翔太の脳内にそのような疑念が生まれる。管理公社がこれだけ大胆な行動をするとなると、そのものは管理公社にとって重要なものであるに違いないからである。管理公社にとって、これはただの遺失物捜索ではないのだ。翔太はここにきてようやくことの重大さの一片に触れたのであった。


 ――どうする? 今ここで止まってSDカードを渡すか?


 自分たちの持っているSDカードが管理公社にとって重要なものであるならば、無駄な抵抗はせず素直に渡せば穏便にことが解決するだろう。むしろ現在の状況を考えれば、それが妥当な選択であるのは明白だ。


 しかし逡巡してしまうのは、ひとえに絵真の存在があるからである。


 追われているせいもあり、無意識にアクセルペダルを強く踏み込んでしまい、それに伴い車は加速してく。高速で流れゆく景色の中、助手席の絵真は両手を重ね合わせて胸の前に置き、身体を縮こまらせている。その不安による怯えた表情も合わさり、絵真の様子はまるで大きな存在に射竦められた子猫のようであった。


 翔太は昨日出会ったばかりの絵真を思う。見知らぬ土地に行くため表情と態度が強張っていた絵真。お目当てのSDカードを購入できて満足気な表情をする絵真。池袋の街を撮影して回ることで打ち解け合い屈託のない笑みを浮かべる絵真。紗代と一緒にお風呂に入ることに羞恥心を抱いた絵真。そしてなにより、管理公社が購入したSDカードを探しているかもしれないと判明したときの、不安げな表情を浮かべて消え入りそうな声で自分の思いを述べた絵真。


 ――迷う必要なんでないじゃないか!


 それらの絵真の表情を思い出すと、翔太は是が非でも絵真の意思を守りたいという衝動に駆られる。今自分たちが持っているSDカードはデータだけではなく、絵真の感情そのものが詰まっているのである。自分たちと打ち解けた証であるデータとしての記録と感情としての記憶を、今ここで奪われるわけにはいかないのだ。奪われたときの喪失感を抱いた絵真の表情など、見たくもない。翔太はそのことを強く認識すると、これからの行動の決意が自然と固まる。


 ――ハッ! 管理公社と鬼ごっこだと? 上等じゃねえか。やってやるよ。


 逃げた先に何があるかはわからない。しかし捕まった先には、言いようのない喪失感が待ち受けているのは確かである。ならば、翔太にとってやるべきことはただ一つである。


「絵真、取っ手掴んでくれッ!」


 これから全速力で駆け抜けるにあたって車体が大きく揺れることを考慮し、翔太は絵真に安全のため扉上部に取り付けられているグリップを掴むよう言い渡す。それに対して絵真は、翔太の叫び声に近い指示に一瞬身体をビクッと震えたのち、その意図を理解して頷き、素直に従った。


 絵真がしっかりクリップを掴んだことを横目で確認したのち、翔太は一気にアクセルペダルを踏み込む。それにより速度メーターの針は振り切れんばかりの勢いで動き、慣性の力で身体はシートに押さえつけられる。速度が上がったことにより、ハンドル操作はよりシビアなものになる。


 程なく進むと、再び分岐に差し掛かる。しかしその分岐も都心環状線に続く道以外は封鎖されており、完全に誘導されていた。その相手の思う壺になっていることに歯噛みしつつ、翔太はこのまま都心環状線を進むことにする。


 ――しかし、参ったな。


 このまま都心環状線を進めば、分岐の先の細い急カーブに差し掛かる。スピードを出した手前すぐさまスピードを落とすのは、まるで相手に恐れをなして考えなしに加速したと思われて非情に無様である。


 ――仕方がない。やるか。


 運び屋として日々車を運転している翔太にとって、ここで引くのはなんとなく負けた気分になる。


 翔太は更に加速させる。一方後続の追跡車両はこの先のカーブを見越して減速した。恐らく彼らの考えとしては、猛スピードでカーブに侵入して事故を起こしたところを抑えようとしているのだろう。しかし翔太としては、相手の思い通りになるつもりは毛頭ない。


 分岐に差し掛かり、そのままのスピードでカーブに突入する。翔太は神経を尖らせ、ハンドルを切る。すると猛スピードである故に慣性の力が作用し、前輪と後輪とで進行方向に差が生まれてしまう。その結果、後輪のタイヤと路面の間に作用していた摩擦力がなくなり、車は横滑りする。しかしこれは翔太が意図してやったこと。翔太はステアリングの操作で車体を維持しつつ、ブレーキを使用せずにドリフトをしてカーブを曲がっていく。


 タイヤが路面を滑る不快な音が耳をつんざく。それでも翔太は五感で現状を把握し、リアルタイムでその情報を反映させていく。微調整しつつ、翔太はカーブの終わりを渇望した。


 技術的、そして精神的に限界を迎えようとしたところで、幸いにもギリギリカーブを曲がりきることに成功する。ドリフトによって速度が落ちてしまったため、カーブからの立ち上がりが遅くなってしまう。しかし猛スピードでカーブに侵入したことにより、追跡車両を離すことができた。


 このカーブの先には、多少の上り下りとカーブがあるものの、基本的には平坦な直線道路がずっと続いている。再度全速力で駆け抜けられると思い、翔太はアクセルペダルを踏み込もうとする。


 ――しまった! やられた。


 曲がりきった先の直線、視界がよく遠くまで見通せる。しかしその視線先には、またしても管理公社の車両とバリケードによって道が封鎖されていたのだ。管理公社の真の狙いはこれであった。後続の追跡車両はつかず離れずの位置を維持。翔太たちの車が分岐先の細い急カーブを通過したのち車両で封鎖。これにより前進と後退の選択肢を奪い立ち往生させるのが目的であった。


 翔太はこのままアクセルペダルを踏み込んでいいものなのか、その判断に迷う。前に進んでも後ろに下がっても、待ち受けるのは管理公社。まさに進退窮まる状況。どちらをとっても、結果は変わらないのである。


 ――ここまで、だったのか……。


 何が何でも絵真の思いを守ると気張ってから実際にできたことは、結果的に猛スピードでカーブに突っ込みドリフトして曲がりきった、ということしかなく、何も達成することはなかった。勢い込んだもののそれが達成できないのであれば、それはただのパフォーマンスでしかない。目標や目的を掲げるのはいいが、現実的に可能性のないものは目標や目的でもなんでもなく、理想と無謀でしかないのだ。


 翔太は自分の無力さに歯噛みし、ハンドルを強く握り締める。絵真の思いを守ることはいいとして、そのことで立ち向かう相手の力量をはかり損ねた。何をもって管理公社と渡り合えると思ったのか。何をもって管理公社を出し抜けると思ったのか。何をもって管理公社を翻弄できると思ったのか。今考えてみれば、そんな要素何一つないことを翔太はようやく自覚する。そして自覚は即ち、自責に変わる。


 力んだ身体は、すぐさま脱力していく。ハンドルを撫でるように下がっていく手も、最終的にはハンドルの下部に申し訳程度に触れているだけである。


「絵真、す――」


 翔太は涙目になりながら隣の絵真の方を向き、謝ろうとした。しかしその言葉は、絵真の背後を高速で横切った影によって打ち消された。


 翔太の運転するセダンを追い抜いていったのは、翔太にとって見覚えのあるSUVであった。


 ――母さん!?


 それは片山家が所有している車であり、主に街中での遺物回収時に使っている、ガタイのいい厳つい車であった。そして現在、息子である翔太はセダンに乗車しているので、消去法で考えれば、SUVを運転している人物は、母親である明美以外にありえないのである。


 ――でも、どうして母さんが?


 翔太は瞬間的に疑問符を頭に浮かべたが、それは今考えるべきことではないとして頭の中から排除する。どういう経緯があって、どのような理由で母親である明美がここにいるのかは、残念ながら翔太には推し量れないが、助けてくれるということだけは理解した。


 翔太は意を決してアクセルペダルを踏み込み、過ぎ去っていった明美のSUVを追う。その車種故のパワーに置いてきぼりになりそうだったが、それは結果として適切な車間距離を生んでいた。翔太は明美がこれから行おうとしていることを察する。それ故、明美に追いついてはいけないのである。


 そしてその瞬間が来る。明美は減速することもなく、むしろ加速して道路の封鎖を突破しようとする。そのパワーをもって停車している管理公社の車両を押しのけ、設置されたバリケードを蹴散らす。衝撃により明美の車は減速したが、強くアクセルペダルを踏み込むことによって、バリケードを強引にこじ開けた。


 翔太が明美に接近しなかったのは、その事態を予測できていたから。正面が封鎖され、背後も封鎖されようとしているのであれば、極論として片方を強行突破するしかない。しかし単独で突っ込んでも、可能性としては突破できるかもしれないが、その後の立ち上がりが絶望的である。


 しかし誰かが代わりに突っ込み封鎖に穴をあけることができれば、その限りではない。代わりの者が正面から突進してその余波を受けずに済めば、無傷で封鎖を突破することができるのである。そのための大きな車間距離なのである。


 この状況において、明美は切り込み役であり、そして殿役でもある。


 封鎖を穿つことにより発生した空隙。翔太はその隙間を全速力で通過する。その際横にそれたSUVを視認するが、残念ながらフロントガラスの向こう側は見えなかった。翔太は走行しながら明美に感謝をした。


 だがしかし、管理公社もこのまま引き下がることはしなかった。明美の突進から立ち直った管理公社の車両は、翔太を追跡しようと発進する。そして明美も翔太を守るために再発進をする。


 翔太の車を先頭に、そのあとを明美の車が距離をおいて追いかけ、そのすぐ後ろを管理公社の車両群が追い回す。


 しかし変化はすぐに訪れた。翔太の視線の先のバックミラーが、明美の車が急旋回するのを映した。明美は直線道路にて、急にドリフトをしたのであった。そのドリフトは小さな円を描き、そしてまるでボクサーが相手の顎に打撃を与えるかの如く、明美は遠心力を纏ったSUVの後部を先頭の車両の前部に殴りつけた。


 強制的に車体の向きを変えられた管理公社の車両は、後続の仲間を派手に巻き込む。それにより多くの車両の追跡を阻止することに成功する。


 しかし二台程その巻き込みを逃れ、追跡を続行する。その二つの影は、翔太の運転する車のバックミラーにはっきりと映った。


 ドリフトをしたことと車体をぶつけたことにより、明美の車は立ち上がりが遅れてしまい出遅れたが、すぐさま追いつき、横並びになる。しかし明美の加速は止まらない。そのまま追い越し、再び翔太の車の背後の位置を維持する。


 そして明美は再び小回りでドリフトをする。しかし流石に学んだのか、二度目の攻撃に管理公社の車両は減速することで回避した。だが明美はそこで止まらない。一回転、二回転と、明美はドリフトを続け行く手を拒む。ときには八の字を描いたり、ときには急接近して挑発したりと、明美はまるで舞い踊るかのように複数の車線のある道路を縦横無尽に移動する。


 それにより、管理公社の車両二台はどう突破していいものか逡巡したらしく、なかなか先に進むことができないでいた。そしてその逡巡は、翔太にとっては好都合であった。


 翔太はこれを機に管理公社と距離を取る。そしてバックミラーから明美と管理公社の車両が姿を消したことを確認すると、深く息を吐いて安堵した。


 助手席を見やれば、絵真が満身創痍であるかのようにグッタリとしている。しかし翔太の視線に気がついた絵真は、勢いによって乱れた髪を直すこともせずに見つめ返し、翔太と同様安堵の表情を浮かべた。


 二人揃って張り詰めていた気を弛緩させる。それは謎の一体感を生み、お互いの距離が縮まる。そのことがたまらなくおかしいのか、翔太も絵真も吹き出すように笑みを浮かべた。


 翔太と絵真が笑みを浮かべた次の瞬間、破裂音が轟く。


 絵真は突然のことでびっくりし動揺する。しかしそれ以上に翔太は事態を重く受け止めていた。


 ――ハンドルが、効かない!!


 全く効かないことはないが、先程と比べれば明らかに感度は落ちており、思うように操作することができなくなっていた。制御不能に陥っていく車体に、翔太は焦り出す。


 ――パンク、いや、バーストかッ。このままではまずいぞ!


 タイヤが突如として破裂したことを察した翔太は、派手な事故になる前に車を停止させようと必死になる。しかし思うようにブレーキは効いてくれない。そこで翔太は車を壁面にぶつけることで停止を試みる。しかし絵真が同乗している手前、壁にぶつける箇所は選ばなければならない。


 翔太は僅かに効くハンドルを操作する。それにより制御を失った車は何回転もしながら横滑りし、徐々に左側の壁面に近づいていく。翔太はその回る視界の中、僅かな情報を頼りにして懸命に壁面との衝突のタイミングをはかる。


 そして車体後部が壁面の方に向こうとした瞬間、翔太は素早くハンドルを切り、横滑りに僅かなベクトルを与える。そのことにより、本来壁面すれすれを掠めるはずだった車体後部は、その軌道を変えて壁に衝突する。壁面に叩きつけられたことにより車体後部、セダンのトランク部分は拉げ、大破して車は停止した。


 翔太と絵真は壁面の衝突による衝撃を受け悶える。


「絵真、大丈夫か? 怪我とかしてないか?」


「うん、痛いところはないから、目立った怪我はないかも」


 絵真は今しがた何が起こったのか把握しきれておらず、思考が停止して頭の中が真っ白になっている様子であった。そこに投げかけられた翔太の心配に、絵真は反射的に答えるのがやっとだった。


 絵真自身は大丈夫と言っているが、実際に強い衝撃を身体に受けたので、首の辺りを痛めるむち打ちが懸念される。むち打ちはすぐに症状が出るわけではないので、実際問題今痛くないから大丈夫という判断は軽率である。しかしながら骨折や出血など、今すぐ異常だとわかる怪我をしている様子はないので、そこだけは幸いだった。


 幸い翔太も目立った怪我はなかった。翔太は状況を確認するため、自分たちが来た方向を見やる。タイヤが突如破裂したことは確かではあるが、そもそも車のタイヤはそう簡単に破裂などしない。ならばそこには何かしらの外的要因が加えられたに違いない。


 翔太は目を凝らして見やる。そして、かすかにその存在を目視することができた。


 ――あらかじめ、罠を仕込んでいたのか。


 翔太が見たものは、路面から生えた無数の棘であった。それは撒菱のような棘を持った帯、車両強制停止装置スパイクストリップであった。


 警察等で配備されていたその器具は、あらかじめ路面に設置し、暴走車がそこを通過するように誘導して使う。車両強制停止装置の上を通過した車はタイヤに棘が刺さり、穴が開けられる。そして空いた穴から一気に空気が漏れ出し、タイヤを破裂させて制御奪う荒技であった。


 全く動かない車を前に、翔太は呆然とした。最早万策尽きた状況である。


「ここまでみたい、だな」


「うん」


 翔太の呟きに、絵真は頷いて反応する。だが、


「ん? いや、この場所は……」


 周囲を見た翔太は、あることに気がついた。そして次第に、表情に活力が戻ってくる。


「絵真! まだ逃げられるかもしれない。早く車から出よう」


 そして翔太は忙しなくシートベルトを外しながら絵真を促した。急変した翔太に絵真は訝しみつつも、言われるがままにシートベルトを外し、二人揃って車外に出ていった。




 管理公社警備部は、ターゲットの車が車両強制停止装置の上を通過した際の破裂音を聞き、迅速に次の行動に移った。追跡していた部隊とは別の部隊を現場に向かわせ、即座に包囲するよう命令した。そして実際に音が轟いてから車を包囲するまで、大して時間はかからなかった。


 しかしながら、そこには誰もいなかった。逃亡したものだと思われたが、現場は首都高速道路の真ん中である。道なりに逃げたとしても、見通しのよい高速道路では、すぐさま発見されるのがオチである。だが道路には、管理公社の人間以外誰もいなかった。


 首都高速道路にて、二人の少年少女が忽然と姿が消えたのであった。


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