幕間 -星粒の煌めく海で-

 中折れ帽を被って、亜米利加アメリカの庶民の格好を纏った日本人の若い男は、真新しい客船のデッキから、無数の光の粒に彩られた星空を眺めていた。


 しばらく眺めた後、正月明けの夜風が吹きすさぶ太平洋を背にして、デッキから船内に戻ろうとする。


「失礼」


 出入り口で白人の夫妻と肩がぶつかりそうになる。隙のない動きで避ける男に、白人の夫妻は冷ややかな一瞥をくれてデッキへと去っていった。


 亜米利加アメリカとの戦争が終わり2年と少し。ようやく再開された太平洋航路の船上で、男……颯太そうたは、唯一の手掛かりが記された1枚の古い手紙と写真を手に、蒼と雲の彼方にある地、亜米利加アメリカを目指していた。


 夜空に煌めく星粒から、かけがえのない星粒を探し出すために……


(初出:第2回てきれぼ300字SSポストカードラリー「手紙」)

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