声はもう届かない

 二つの視点を入れ替えながら進んでいき、その表裏がひとつになって追いついた瞬間にぶつりと切れる。
 そうして読者は、取り返しのつかない何かが終わってしまったのだと、まさに主人公と同じように思い知る。
 どうしようもなく臆病であるがゆえにとんでもなく大胆になってしまった美和の切実さを、私たちは笑えない。

 東北の冬は長く、雪に閉じ込められたようなそれは音もなく永遠に続くかのように錯覚するけれど、その風景が作品そのものをよく表している。

 最後の一文が秀逸。