第2話 出会いの季節

春といえば 桜と草もち

秋になれば 花火と銀杏ぎんなん

冬といえば 雪と鍋

夏といえば……

夏…といえば……

凄く個人的に言うと夏は 嫌いだ

暑いし、虫は多いし、外はうるさいし、ほっとくと臭くなるし、人は増えるし、布団は減るし、何かと用事は溜まるしで、もうろくなことがない


今年も私の夏は鬱陶しいものだった

去年の暮れに父の転勤が決まり

春は ふてくされていた

夏の初めには 新天地に引っ越し

今は二週間ほど過ぎようとしている


ところでだ

今私は 慣れない町を歩き

慣れない道に迷い

しまいには地面の石ころと

顔を突き合わせている

…というよりぶっ倒れている


せめてあの木陰まで避難したほうがいいよね

引越し早々 道端に寝る変な女

だとは思われたくない

まあ その住民が

さっきから見当たらないんだけど


っぷぁーー

やっと一息つけたー

人知れず夏の暑さで死ぬところだったよこれは

いや、にしても感触良いなこの木

なんの木だ?クヌギだろうか

私の腰回りをすっぽりと包むこの窪み

ちょうど肘の高さにある出っ張り

足を延ばすとちょうどいい置き場になる根っこ

ああ これは 最高の家具に出会えたのかも

誰か水を持ってきてくれないか

いや君でもいい 誰でもいい

どうしてもこの体勢を崩したくない…


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