唖然とした。

沈黙は雄弁に語ると言うが、本作ほどそれを体現した作品は他にはないだろう。日本の俳句も良い線をついているが、本作ほどではない。タイトルから本文までを含めても9文字だ。しかも、それらがすべてシンメトリックに配置されている。これを上回れるものは『4分33秒』しかあるまい。ただし、あれは静かすぎる。

が、驚くのは本作が持つ非存在の存在性ではない。そうではなく、本作のジャンルがSFとなっている点だ。

サイエンス・フィクション。

つまり、本作のオレオはオレオであって、オレオではない。少なくとも私たちの地球上にあるオレオではない。それは特異な力を持ったオレオである。黒々とそびえ立つモノリスがイメージできるだろうか。本作のオレオはそれに匹敵する存在なのだ。万物を生み出し、あらゆるコミュニケーションの根源となり、すべてを吸い込む力を持つオレオ。その力は、畏怖の念と共に読者の脳裏にありありと刻まれるだろう。

しかしオレオは去ってしまった。その力を求める別のβ宇宙線に導かれ旅立っていった。それが宇宙の摂理であり、私たちのルールでもある。私たちは私たちだけで生きていくしかない。オレオがないこの宇宙で。

きっとオレオの旅立ちを見送る私たちは、呆然と立ち尽くすことだろう。この小説を読み終えた私たちと同じように。