映画撮影の望む、長い灰色の線

穴田丘呼

第1話ある時代からある時代へ

時代があった。何にでも終わりと始まりがあるように時代にも終わりと始まりがある。そして個人の生命に於いても終わりがあり始まりがある。個人史に於いて誕生が始まりだと思われる方もいるかもしれないが、人間はそんな単純な生き物ではない。それ以前、つまり精神分析学に頼るなら親子三代までが問題となる。だが個人に於いてそこまでたやすくたどり着く人は少ないだろう。ぼくも三代となるとおぼろげにしかわかってこない。せめて親子でぼくの場合、考えるしかない。親子? 父と母だ。しかしぼくの場合、父と会話したことがない。無口な人だったのだ。だから母でしかぼくは始まりを見ることができない。また父は若くして自殺という手段をとった人なので、それなりに歳を重ねた現在は彼とは話せない。


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