第30話

「結局、教えたんだ、ゴウショウ」

 連達が退去した直後だった。笹賀原の前に、『白い少女』が現れる。先程まで連達が座っていたソファにしれっと腰かけている。

「相変わらず、神出鬼没だな、『白女』」

「もーう、マキナって、ちゃんと名前で読んでよね」

 「ぷんすか」と口で言って頬を膨らませる。ふざけた態度だ。

「それにしても、結局教えるのかよ! って思わず出て行って突っ込みそうになったよ」

 マキナは楽しくて仕方がないといった態度で続ける。

「あれか、ツンデレって奴か」

「そんな楽しげな属性は私にはついていない」

 笹賀原は、豪奢な椅子にふんぞり返って答える。

「あいつは、気に食わんが……面白そうな奴ではあったからな」

「気に食わんのに?」

 マキナは尋ねる。

「あれをあの人と引き合わせたら、どんな表情をするんだろうな、と思ってな」

「そのために、教えたの? あの場所を」

「ああ」

「ふーん」

 マキナはいつの間にか立ち上がり、部屋の中に置いてあった豪華な燭台をいじっている。

「でもさあ」

「うん?」

「結局は、レンの思い通りに情報を上げたって事じゃん」

「…………」

「それって自分に都合がいい様に言い訳しているけど、結局はレンに、ほだされただけなんじゃない?」

「……黙れ」

 笹賀原は手元にあったクッションをマキナに向かって投げつけた。

 その時には、マキナはもう消えていた。

 笹賀原は小さく舌打ちした。


「『正義の味方』……そんなものは……」


 男の言葉は誰にも届かず、どこかへと消えた。

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