第21話

 正門に居た守衛を通して、占いをしてほしい旨を伝えるとあっさりと入場を許可された。「子供は相手にしていない」などと言われてもおかしくないと思っていたので、拍子抜けである。

 とはいえ、入れてくれるならそれに越した事はない。堅牢な作りの門扉を開け、中に入る。

 門から玄関までの距離もちょっとした公園ぐらいだ。個人の邸宅と考えれば、やはり並ではない規模だ。相当な金持ちなのだろう。

 金で出来た(やはり本物か否かは判断がつかない)豪奢な扉の前で執事の様な恰好をした老人が迎えてくれる。「どうぞ、こちらへ」と言われ、邸宅内に踏み込む。

 内装もやはり贅沢の粋を集めた物だった。ちょっとしたホールの様な玄関。壁に幾枚もの絵画が飾られ、大きな壺や花瓶が所狭しと配置されていた。足元に敷かれた絨毯もかなり高級な物と見受けられる。

 いっそ悪趣味なまでに「金持ち」を主張しているように思えた。こんな空間で生活しているとは、この屋敷の主人は一体どんな人物なのだろうと思った。

 「こちらへ」

 老執事の案内を元に、長い廊下を抜け、一室に案内される。

 その扉の先に広がっていたのは、神秘的な空間だった。

 まず、昼間だというのに、部屋の中は真っ暗だった。おそらく遮光カーテンで部屋の周りを覆っているのだ。部屋の壁一面に黒い布がかかっていた。

 そして、部屋の中央には、数台の燭台が置かれ、部屋の中心にいる人物を照らし出していた。

「ようこそ、我が屋敷へ……」

 厳かな物言いの男が、宝石が散りばめられた高級そうな椅子に座っていた。その男自身の恰好も、いかにも占い師といった黒いローブをつけているが、その上を多くの貴金属類が覆っていた。

 肝心の男の顔は、薄暗さとローブのフードの為に解らなかった。

 屋敷からその主人まで、至る所に「金」がある事をチラつかせている、そんな印象を受けた。

 紀里はそんな空気に呑まれた様だった。

「あ、えっと占いを……」

 しどろもどろになっている。

「君達がここに来た理由は解っている……」

 いかにも占い師が言いそうな台詞だが、ここに来た目的を本当に当てられたなら、この人物は「本物」と言わざるを得ないだろう。


「超能力者を探しているんだろう」


 ヤバイ、本物だった。

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