第8話

「見えない攻撃を避けるなんて、キミって超能力者か何かかい?」

 声がかかったのは、攻撃を避けた直後だった。

 見知らぬ少女が、連の真横にあるベンチにいつの間にか腰かけていた。

(いつの間に現れた……?)

 手を伸ばせば届きそうな距離だ。最初からそこにいて気がつかない筈がない。

 それになにより、この少女は「見えない攻撃」と言った。

 この少女は何かを知っている。

「今のはおまえがやったのか?」

 連は尋ねる。

「いやいや、まさか」

 少女はニヤリと笑いながら言った。

「居るのさ。キミの目の前に、透明人間が」

 やはり居るのだ。

 この言葉で連の予想は確信に変わった。別にこの女の言う事を信用する訳ではないが。

 そして、改めて、ベンチに座る少女に目をやる。

 『白い』。

 腰にまでかかる長い髪は、透き通るような純白だった。それは完全な「白」だった。銀髪とか、白髪ではない。まるで「白」という概念そのもののような色をしていた。背丈や容姿は中学生くらいに見える。整った顔立ちと髪の色が相まってまるで精緻な人形が動いているように感ぜられ、不気味ですらあった。

 そして、服装は白装束。着物のようだが、帯まで真っ白で、丈は短い。まるでミニスカートのようだ。その下から少女の健康的な肢体が顔を出していた。

 そんな足を組んでベンチに腰掛けていた少女は立ち上がりながら続ける。

「今もキミの目の前に透明人間が居るんだよ」

 その時だった。

 何もない空間に一枚のメモ用紙が浮かんでいる事に気がついた。

『余計な事を言うな』

 昨日と同じファンシーなメモ用紙に走り書きした字で、そう書かれていた。

「この現状は、フェアじゃないと思ってね。片方だけ超能力使えるんだぜ」

 白い少女は連と透明人間の間に、立つようにして連と向き合う。

 白い少女は見る者を魅了するような無邪気な笑顔で言った。

「平等にするためには、両方を超能力者にするのが一番!」

 その時になって、連は目の前に居る少女が、昨日友也達が言っていた都市伝説の『白い少女』であることに気がつく。

 あのとき、友也達が言っていた事を思い出す。

――『白い少女』に出会った者は死ぬ

 それとも、願いを叶えてくれるのだったろうか?

 そして、白い少女は言った。


「――さあ、キミの心を見せてくれ」

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