第5話

「昨日の帰り道、大丈夫だった?」

 翌日の朝、連と遥が二人で登校している時の事だ。

「どういう事だ?」

 連は平静を装って遥に尋ねる。

「いや。もし、本当にあたしをつけてる人が居たとしたらだけど。連に何か危害を加えたりとかしていないかと思って」

「ないよ」

 遥の言葉を遮る様に否定する。

 昨日のメモの事が遥には言っていなかった。徒に遥を不安がらせる必要はない。自分がさっさと犯人を抑えればいい話だ。連はそんな風に考えていた。

 遥に危険が及ぶ前に犯人を抑える。連は決意を新たにする。

「ならいいんだけどさ……」

 遥は少し不安そうな表情を浮かべている。

「連ってさ」

 学校の校舎が見えてくる。

「なんでも一人で背負い込んで解決しようとする所あるでしょ」

 連は何も応える事が出来なかった。

「龍君の時もそうだよ……」

 正門をくぐり、小奇麗な昇降口を目指す。

「あのときだって……」

「大丈夫だ」

 力強い言葉で連は遥の言葉を断ち切った。

「おまえは何も心配しなくていい」

 昇降口では、昨日の女子生徒がまた絵を描いていた。

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