美しくもほろ苦い恋心が、カクテルと共にあなたを酔わせます。

ずっと好きでいて、いいですか
ご迷惑はかけません──

防衛省という特殊な職場の上司である日垣に秘かに想いを寄せていた美紗。
情報を扱う仕事柄、冷静沈着で厳しく本心を表さない日垣に初めは畏怖の念を抱く美紗でしたが、彼の素の人柄に触れるにつれ、家庭で得られなかった父性を求める気持ちがいつの間にかもっと特別なものに変わっていきます。

けれども、日垣には複雑な事情で赴任地に同行できない妻と子どもがあり、彼はその家族を大切にしているのです。
いつしか毎週金曜日、日垣の行きつけのバーでお酒を飲むことが定番になっていた二人ですが、日垣を思う気持ちと、日垣が大切にしているものを自分が壊してはいけないと思う気持ちで美紗は揺れていきます。

悲しみに暮れる美紗が二人の行きつけのバーで、バーテンダーを前に日垣との回想を語るという形式を取っており、二人の間に何かあったことは冒頭から察することができます。
控えめで自分の感情を抑え込みがちな美紗がそこまで苦しんでいる理由が知りたくなり、いつしか彼女の心に寄り添うバーテンダーの目線で回想を追うような気持ちになっていきます。

特殊な職場の様子が細かく描写され、そういう(自衛隊的な?)方面がお好きな人にはさらに楽しめる内容かと思いますが、そちらに詳しくない私のような人間でも、美紗が地道な努力で職場のメンバーからの信頼を得て、それを日垣が暖かく見守る様子が伝わり、彼らの関係性や美沙の想いがより深く理解できるようになっています。
物語の折々に出てくるカクテルとそのカクテル言葉も物語にそっと寄り添い、味わい深さと華を添えています。

炭酸の泡が弾けるようにキラキラと純粋に煌めきつつ、味わいはビターで強く酔わされてしまう、そんな大人のラブストーリーをあなたも一杯いかがですか?

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